2005.09.12

「占領終結」とは言えない

日本のマスメディアは、こぞってガザでの「占領が終結」という見出しを掲げ、イスラエル軍のガザからの撤退を報じている。

US.Yahooにあがったパレスチナ関連80本分の記事のヘッドラインを見たが、「占領終結」と書いたものは、どこもなかった。いくつかを拾うと、こんな感じだ。

  • 「38年後にイスラエル軍がガザを去る」(AFP)
  • 「イスラエル兵、ガザにさよなら」(AP)
  • 「イスラエル部隊、ガザを去り、パレスチナ人が入ってくる」(ロイター)

たしかにAPは「イスラエル議会、ガザでの支配終了を承認」というような記事も流しているが、それでも「占領終結」とは書いていない。普段イスラエル軍放送そのままを流していることがほとんどであるロイターですら、 "Occupied or not? Gaza's new status stirs debate" (占領か否か、ガザの新しいステータスに巻き起こる論争)という形で、今回の撤退によって、ガザがどういう状態に置かれたと判断するべきかの議論を紹介している。

結局のところ、入植地がなくなり軍がいなくなっても、自分たちで出入国の権利を持たず、海域も空域もコントロールできない状態なのが占領の終結と言えるかというと、それはとても疑問だというのが大方の見解であるし、それを英語でのニュースは反映している。(となると、日本のマスメディアはいったい何なのだろう?不勉強?イスラエル政府のスピーカー役?)

イスラエル議会は最初の予定を変更し、入植地内にあったシナゴーグ(礼拝堂)を壊さないでそのままにすることにした。当初、パレスチナ人にシナゴーグを壊されるのは忍びないとしていたのだが、突然、自分たちの手で壊すことはできないとなったらしい。その突然の変更をイスラエルのモファズ国防相が非難しているくらいだ。

そして案の定、入植地だった場所の解放に喜んでなだれこんだパレスチナ人の若者などがシナゴーグに火をつけるというような展開になり、これがまた大々的に報じられている。

(「野蛮な」パレスチナ人というようなイメージがこれでまた強化されるのだろうが、自分たちの奪われていた土地に勝手に作られたものを取り払うというのは、自然だ。嬉しすぎて、羽目を外しているとも見える。38年苦しめられたものがなくなったら、そうなるのはある意味、仕方ない。)

エジプトとの国境近くではイスラエル軍に変わって展開しだしたエジプト軍にパレスチナ人ひとりが射殺されるという事件も起きた。

しかし、軍がいなくなって純粋に喜ばしいことも起きている。海岸から5分の場所に住んでいたガザ南部のラファの少年が生まれて初めて自分の街の海に入ったというニュース。

15歳の少年ふたりがジーンズをまくしあげて、自分たちの家のそばの地中海に身を浸したという様子をAPは報じている。波に身を晒しながら、

「この世でもっとも素敵なことだね」
なんて少年は語っている。他にも壊れた冷蔵庫の扉をサーフボードにして、波乗りをしている子どももいたとか。

大人ももちろん、海を楽しんだ。店を閉めて海岸にやってきた41歳のムハンマド・デイルさんは

「今日、私がする唯一の仕事は、ビーチと境界線まで行くことなんです」
と、イスラエル海軍の船がパトロールする海岸で言ったという。

"Palestinian Teens Hit Beach After Pullout" AP、13日付)


ラファの写真を見ていて、すぐ傍に地中海が見えることに驚いたことがあった。街から見えるのに、決して行けない場所──入植地が陣取っていて、パレスチナ人は入れないから──があるのはつらいなぁと思ったものだ。あの海に今は行ける!

それは反対に今までの状況がどれだけ不自然だったかを物語っていると思う。すぐそばの海岸に行けることに驚喜するパレスチナ人たち。当たり前のことを手にして、それを祝っている。

(同じラファの子どもたちが6月にガザ市の海に遠足に行った時の嬉しさ爆発のレポートが 「久しぶりの海─ラファの子どもたち、海に行く─」 に。もうガザ市まで行かなくても、歩いて海に行って楽しめる!)

こんな謎のニュースも。ハマスが「撤退」を祝うポップソングを披露したという。テーマは「我々がガザを解放した」というようなもので、なんと10曲も新曲があるらしい。演奏するのは「ヤシン・バンド」(暗殺された指導者アハマド・ヤシン師にちなむ)。ハマスは「イスラーム原理主義の」と言われるが、こういうところを見ると???となる。やたら鼓舞をする歌詞のセンスがいいとは思えないが、それなりにティーンに受けている模様。( "Hamas makes music in Gaza celebration war"

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