2005.08.26

「家に帰るのに9時間、でも、テルアビブにはすっと行けちゃった」

重要案件は控えているのだけど、こういうのは読んだら書きたくなっちゃう目から鱗!の、パレスチナ人の体験記。家に帰るために検問所を数々越えて9時間かかったけど、テルアビブには楽々行って来ちゃいましたというもの。隔離壁はどうなっているんだ〜?って、じつは有名無実なんだな、ある意味では(隣のパレスチナの町には行けなくても、イスラエルには行けるんだね!)。というわけで、こんなお話。

サイダ村(トゥルカレム北部)のアッシュさんは、ラッマラーから自分の村に帰ろうとして6回の検問所に行き当たってしまった。それでかかった時間が9時間(たぶん、普通に車で行けば、2時間もかからないと思う)。その経験はいつもながらにエグイ。

「イスラエルの検問所(チェックポイント)は私たちが直面している毎日の辱めの中で象徴的なものだ。イスラエル兵が何時間も私たちを待たせておくというだけではなく、そのすべての過程が私たちから人間性を奪おうとするもので、自分たちが無価値で、人間以下のものだと感じさせるものだ」……

人前で裸にされたり、いきなり殴られたり、逮捕されたりすることはかなり常習化しているが、そんなことがなくても検問所は人間を傷つける。この日、アッシュさんを乗せたバスはトゥルカレム近くで兵士が許可を出さなかったために検問所を越えられず、迂回して別の道を行き、別な検問所を通った。そこは金属の遮断棒と、監視塔と有刃鉄線でできた検問所で、数日前にトゥルカレムと他の村を遮断する形で設置されていた。

60人ほどのパレスチナ人が列に並んでいて、兵士がIDや荷物を検査するのを待っていた。長い時間待っている人々はフラストレーションを溜めていた。

「IDを検査されるために歩み出た一人の女性が兵士に言った。『あなた方は私たちの土地、水、空間を盗んでいるわ。なぜ、私たちの移動さえも制限するの?何がこれ以上ほしいの?』

兵士は『黙れ!』と叫び、私たちに20フィート後に下がるよう命令し、水を飲みに行って来いと言った。……それから兵士はゆっくりと手続きを再開し、行け!と一人ずつに行った。[水と空間を取っていないということを嫌味に兵士は見せつけたということらしい]

……(次には)トゥルカレムに近い私の村への道でイスラエル軍の車輌が通行を止めていた。バスの人々は下ろされ、M16ライフルを突きつけられる中、服をめくるように命じられていた。…2人の兵士が私のタクシーにやってきて、ドライバーにどこに行くのか尋ねた。『サイダ村です』運転手が答え終わらないうちにドアが開けられて、別のパレスチナ人が車から降ろされた。私は肩を殴られて、外に出るように言われた。

私たちは2人の兵士の前に立たされ、服をつかまれて、訊かれた。『どこへ行くんだ?』『サイダです』『どこに住んでいるんだ?』『サイダです』兵士はそれから「行け!」と言った。

というような連続で、9時間もかけて家に辿り着いたわけだが、その2日前にアッシュさんはなんとテルアビブに出かけていた。

2日前、私がビリーン村にいたときに、私はイスラエル人の友だちと一緒に12歳のとき以来初めてテルアビブに出かけてきた!私はパレスチナ人だし、そこへ行くのは[イスラエルにとっては]違法な旅なので考えてしまったけれど、友だちはテルアビブに行くのはたやすいという。

そこは私たちにとってまったくの別世界だ。

どうやってテルアビブに行き着いたかというと、近くの村からタクシーに乗り、少し歩いてから入植者道路まで行く(「呼吸ができないかんじで、イスラエルの国境警察に捕まらないかと不安だった」とアッシュさん)。入植者道路を歩き、入植地に至る。

「私は入植地の石組みのアーチになっている入り口のところに立って眺めていた。彼らが持っている美しくて、豪華な建物。溢れる緑と泉。私はここに住んでいる人たちは政府がパレスチナ人農民、ビリーン村の住民たちから土地を盗んでこの家を建てたことを知っているのかと考えた。」

入植地でテルアビブ直行バスの出るバス停まで連れていってもらい、バスに乗って、それで終わり。テルアビブに難なく着く。──たとえ、パレスチナ人であっても。というわけで、アッシュさんはこう考えている。

「イスラエルが「安全」のために検問所を作るというなら、どうして彼らはエルサレムとテルアビブの間に検問所を作らないのだろう?なぜ、あの日、私のIDを誰もチェックせずに、私がイスラエルの中に行くのを止めなかったんだろう?

これらのことすべてから私はこう考えた。たぶん『イスラエルの民主主義』とやらは安全と平和という嘘のもと、私たちの気持ちを挫き、私たちから自由を奪うように努めているのだろう、と。」

"Nine hours to get home" (20th Aug.2005、Ash)からの抜粋)


そうだ、このテがあったんだ!なるほどね〜と思う。西岸に入植者がいる限り、西岸とイスラエルを本当に遮断することなどできやしない。

貧困で苦しい中、許可証もなく、「不法」にイスラエルで働いているパレスチナ人たち──それは本当に最低の賃金でこき使われる最下層の仕事だ──がいるのは知っていたが、様々な形でイスラエルには容易に入れることがまたひとつ証明された。(イスラエル人の中には、このような職を求めるパレスチナ人を秘かに運び込む仕事をしている人すら存在している。たぶん、パレスチナ人たちのなけなしの収入から、かなりの額を「運搬料」としてたかるのだろう)。

というわけで、壁を作っても、イスラエルには入ることができる。だが、壁で隔てられたパレスチナの土地同士は行き来できない。

参考: ロイター25日付 (By Muin Shadid)より

In Geneva, a U.N. agency said the barrier Israel is building in the West Bank will further depress a Palestinian economy that has deteriorated sharply since the start of an uprising in 2000.

The U.N. Conference on Trade and Development, in an annual report on the occupied territories, said the Palestinian economy shrank one percent in 2004, one in three Palestinian workers was jobless at year-end and 61 percent of households had income below the poverty line of $350 per month.

Israel says the barrier is a security measure and helps keep out suicide bombers. The World Court has judged the project illegal because the network of razor wire-tipped fences and concrete walls snakes through occupied territory.

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■ コメント&トラックバック (3 件)

コメント by :モジモジ

面白い記事ですね。
ザル状態であることがわかっているのかわかっていないのか。わかっていないとは考えにくいのですが、だとすれば、分離壁の目的とは、純粋に「パレスチナ人社会の破壊」以外の何物でもない、ってことになりますね。別の中で寒くなる話です。

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2005.08.26 (Fri) 22:01

コメント by :モジモジ

別の「意味で」ですね。(× 中で)

何かいてんだろ・・。

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2005.08.26 (Fri) 22:02

そうなんですわ

コメント by :ビー

モジモジさん、

>わかっていないとは考えにくいのですが、だとすれば、分離壁の目的とは、純粋に「パレスチナ人社会の破壊」以外の何物でもない

分かっていないわけはないと私も思うんですよ。「不法」労働者が入っていることも、一種黙認状態。たまに一斉摘発に遭って、追い返されたりしてますが(その際に拷問を受けて、殺された人もいるとイスラエルの団体のレポートで知りました)。

ホントに「安全」という理由はまやかしなんですね。

それにしても、「入植地からバスに乗ってイスラエルへ行く」って、なんてストレートな方法なんでしょうね。虚を突かれた思いがしました。

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2005.08.27 (Sat) 02:26