2005.08.20
「撤退」の煙幕を取り払うためのファクト・シート
ISM(国際連帯運動) から今日(20日)届いたばかりのレポートが「撤退」についてよくまとまっていたので、追加を入れつつ、ざっと訳してみたい。(後に使えるように参考資料となるリンクを入れておきます)。
ISM(国際連帯運動)からのFact Sheet: The Smokescreen of the Gaza Disengagement「メディアに氾濫するイスラエルのガザからの「撤退」報道を見ていると、この地域の和平への「ロードマップ」が前進したと思いがちになる。というわけで、以下の事実を頭に入れておくことは重要だ」
[「*」は原註、「*」は訳注]
- 「撤退」は和平プロセスの凍結やねん
シャロン首相の主席顧問、 ダヴ・ワイスグラスがハアレツ紙2004年のインタビュー で答えていることによると、「撤退の意義は和平プロセスの凍結にある。……パレスチナ国家と呼ばれるパッケージ、それらが包括するすべてはうまい具合に私たちの課題から無期限に取り除かれた。……すべてに大統領[ブッシュ]の祝福と米国両院の承認が付いている。」*1
- ガザはいまだ占領されているんですわ
イスラエルはいまのところ、エジプトとガザの国境をパレスチナ人がコントロールすることを許していない。物資の移動もガザと西岸の間の人々の移動も、ガザの海域、空域のコントロールも許していない。
イスラエルがこれらの領域でパレスチナ人に支配を委譲しない限り、ガザはいまだにイスラエルの軍事占領にあると法的に認識されると、国際赤十字を初めとした複数の団体が一致した見解を出している。(他に「ヒューマンライツ・ウォッチ」、ブツレム、ハモケッドなどのイスラエル人権団体も)*2
- イスラエルのガザ案は米国の最低限の期待にも応えてへん
イスラエルのガザ「撤退」案は米国がはっきりと表現した最低限の期待にも応えていない。コンドリーザ・ライス国務長官は、「ガザからイスラエル人が撤退する後に、ガザを封鎖し、孤立させて、その中にパレスチナ人を閉じこめておくことはできない。我々はガザと西岸の間をつなぐこと、パレスチナの人々の移動の自由に責務を負っている」と表明した。*3
- イスラエルは「撤退」のためのさらなる追加援助22億ドルを米国に求めてまっせ
米国からイスラエルに毎年送られる30億ドルの援助に加え、イスラエル政府は追加の22億ドルをこの3年間に「撤退」資金の援助として求めている。[すでに10億ドルは「撤退」援助としてもらっているという話も]
それらの資金の三分の二は、ガリラヤとネゲヴでの開発のために使われるという。ユダヤ人入植者の再定住とその地域に住んでいるイスラエル内パレスチナ人の「配置替え」のためだ。(ワシントンポストによる)*4
- すべてのイスラエル入植地は国際法を侵害しとるわ
ガザ地区、西岸地区(東エルサレムを含む)のすべてのイスラエル入植地は国際法、とりわけジュネーブ第4条約に違反していると国連をはじめとした諸団体は考えている(他にアムネスティ・インターナショナル、ヒューマンライツ・ウォッチ、ブツレム、国際司法裁判所など)。
イスラエルは見かけ的には入植地を「合法」、アウトポスト(仮設入植地を「違法」と区分けしているにも関わらず、入植地もアウトポストもすべて国際法のもとでは違法なものである。*5
- 42万人の不法な入植者が西岸地区には残っとるよ
ガザ21カ所と西岸4カ所の違法な入植地から9000人*だけ入植者が退去しても、ヨルダン川西岸地区には東エルサレムを含めて42万人の不法な入植者が居残っている(ニューヨークタイムス、他)。*6
- 西岸での入植地拡大と隔離壁建設は急ピッチで進行中や
西岸地区全域に渡るイスラエルの不法入植地の拡大が目覚ましいペースで行われている。とくに隔離壁の西側になり、イスラエルが併合を計画している地帯と、4大入植地において目覚ましい。
イスラエルがガザで2000軒の入植者家屋を取り壊そうとしている間に、西岸では6400軒の入植者住居が建てられている(アリ・アブニマー@「デモクラシー・ナウ!」)*7。
パレスチナの土地にイスラエルが建設している隔離壁はビリーンを初めとして数十の西岸の村々で、土地をイスラエル側に併合しようとしている。
- イスラエルの入植地は土地戦略にもとづいているがな
ガザにおいても西岸においてもイスラエル入植地は、典型的に水が豊富な戦略的な位置に築かれている。そこはイスラエルによる資源、土地の支配を容易にし、パレスチナの土地を切り離してしまうという位置となっている(家屋破壊に反対するイスラエル委員会 ICAHD)。*8
- イスラエル入植者はこの2週間で8人のパレスチナ人を殺害してん
2人の入植者がこの2週間の間に8人のパレスチナ人を撃ち殺した*。イスラエル人によるこれらの殺人にも関わらず、また、パレスチナ人からの暴力がなかったにも関わらず、世界のメディアは撤退期間中の「パレスチナの暴力」の可能性にまず焦点を当てていた。
*参照: イスラエル人入植者、西岸でパレスチナ人4人を殺害、負傷3名 、 ユダヤ人「テロリスト」が銃乱射、イスラエルでアラブ人を4人殺害
- イスラエルは1948年と1967年に80万人のパレスチナ人を家から追い出し、難民にしたんだわ
イスラエルと世界のメディアは、ガザの違法な入植地からそこに30年ほどしか住んでいなかった9000人*の入植者たちの撤退をドラマ化して伝えている。そのイスラエルは、1948年に73万7000人のパレスチナ人に父祖代々の家を捨てるように仕向け、67年にもさらに6万9000人に家を捨てさせた。
イスラエル政府は、大規模な土地没収に対する責任もとらず、国際法で保証されているパレスチナ難民の帰還の権利を承諾することもしない状態を続けている。(アル・アウダ)*9
*ガザの入植者数は、「撤退」が発表されてから「激増」した。6〜7000人と言われていたものが、9000人までになっている。ガザには実際は住まず、農場などに通っていた人なども含めての数値。
*
とくにガザに関する事実*2 入植者専用道路、イスラエル軍の作った緩衝地帯などを含めると40%近くになると思われる。
- イスラエルはガザの3分の一をコントロール
約9000人の入植者とイスラエル兵士は小さく、混み合ったガザの33%*2を支配していた。一方、大半が難民と難民の子孫からなるガザの130万人*3のパレスチナ人は、残りの67%の土地に押し込められてきた。( ニューヨークタイムズ、2005年8月18日)。*10
*3 「140万」くらいが実数か。(ハアレツ、アミーラ・ハスは150万と言っている)
*4 ガザだけでの失業率はもっと高く70%くらいだと推定されている。ガザ南部のラファでは80%を超えるという数値も。イスラエルがガザを貧困化した ガザのパレスチナ人領域は1マイル平方あたり平均14000人の人口を抱えている[1平方キロでは約5500人]。パレスチナ人の失業率は45%*4と見積もられ、ガザの家族の多くは一日を2ドル以下で暮らしている(ニューヨークタイムズ、2005年8月18日)。*11 これは過去のイスラエルの政策によるもので、イスラエルは現在のガザの状況に責任を負っている(「One Big Prison」ブツレムとハモケッドによる)。*12
*4 「撤退」した入植地で働いていたものには(居住していなくても)イスラエル政府から失業手当が出るという(実際に解雇されたかどうかは関係なく)。が、これはユダヤ人にだけだということも、ハアレツ紙のアミーラ・ハスは伝えている。つまり、パレスチナ人労働者や外国人労働者(タイやネパールからの出稼ぎが多かった)には、何の賠償もない。
- イスラエル入植者は何十万ドルもの賠償金を受ける
「撤退」につき、各入植者家族は違法な入植地にある家を去ることに対して、イスラエル政府から30万〜50万ドルの賠償金を受ける資格を得る(「クリスチャン・サイエンスモニター」紙、他)。*13
- イスラエル入植者は政府から長年、減免措置を受けてきた
イスラエルの入植者は政府から複数の減免を賃貸料、水道料金、電気料金などに対して受け、利益を得てきた(ブツレム)。*14
- ガザのパレスチナ人3万人の家は何の賠償もなく、取り壊された
9000人がガザと西岸4つの入植地から去るのに対して、イスラエル軍はこの4年間だけで3万人のパレスチナ人の家屋をガザ地区で破壊した。その多くは難民キャンプやイスラエル入植地に隣接するところにあった。パレスチナ人は家屋破壊に対してイスラエル政府から何の賠償ももらっていない。(ダニー・ルビンシュタイン、ハアレツ紙)。*15
- イスラエル人には荷造りの手伝いを、パレスチナ人には取り壊し15分前に知らせを
イスラエル軍の特殊部隊は入植者がガザの家を離れるにあたり、家財の荷造りを手伝った。パレスチナ人に対しては、イスラエル軍は通常、多くても15分の時間を家を破壊する前に荷造りの時間として与えるだけだ。
- イスラエル入植者はガザの労働力を搾取した
イスラエル入植者は、農業労働者としてガザに閉じこめられて仕事がない難民をイスラエルの最低賃金の3分の一の賃金で雇用してきた。「撤退」で雇用が終了することについても、入植者はパレスチナ人労働者に手当を払っていない*4(アミーラ・ハス、ハアレツ紙)。*16
イスラエルの法的な最低賃金は日給で、約3600円ほど(145シェケル)。ガザのパレスチナ人労働者は、1000円〜2000円ほどしかもらっていなかったことをアミーラ・ハスは書いている。(1シェケル=25円に換算)
- イスラエル人の法律違反者には非暴力で、パレスチナ民間人には暴力で対応する
イスラエル軍はパレスチナ人の土地に国際法を犯して住み、パレスチナ人を殺害し、恐怖に陥れてきた入植者の抗議に対しては、武器を使わないで退去させる方針を取った。*17 通常イスラエル軍は日常生活を営んでいるパレスチナ民間人やパレスチナ人の非暴力の抗議に対して、暴力を用い、過剰な武力を行使している(ブツレム、ヒューマンライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナル)。*18
- パレスチナ人は外出禁止令下に置かれ、入植者からの攻撃は増加
イスラエルは「撤退」期間中、入植地と隣接している多くのコミュニティでパレスチナ人を外出禁止令に置いている。また、「撤退」させられそうになっている入植者はガザでパレスチナ人への攻撃を続けている(アルジャジーラ)。*19
原文: "Fact Sheet: The Smokescreen of the Gaza Disengagement" (ISM)による
原註:
[日本語の関連記事がある場合は*つきで追加した]
[リンク先が新聞社ウェブの場合は、消えてしまうことに備えて、該当個所を引用し、追加した]
*1 "The big freeze" (Ha’aretz)
(リンクが切れている場合は "The big freeze" へ)
[* イスラエルの言うことをちゃんと聞いてみよう──イスラエル・米国のねじれと協調 ]
*2 "‘Disengagement’ Will Change Little for Gaza" (Human Rights Watch)
"The World's Largest Prison Camp" (the Independent)
B’Tselem, and Hamoked; One Big Prison, pg. 84; Gaza Prison: Freedom of Movement to and from the Gaza Strip on the Eve of the Disengagement Plan;(この文書の概要は "New Report Warns Against Continued Strangulation of Gaza Strip after Disengagement" に。文書そのものへのリンクあり)*3 "U.S. State Department: Remarks Following Meeting With President Mahmoud Abbas" (U.S. State Department)
*4 "Israel to Seek $2.2 Billion From U.S. for Gaza Pullout" (Washington Post)
*5 "LEGAL CONSEQUENCES OF THE CONSTRUCTION OF A WALL IN THE OCCUPIED PALESTINIAN TERRITORY" (ICJ、国際司法裁判所)
"Israel: Bush Should Lay Down the Law on Settlements" (Human Rights Watch)
"Israel/Occupied Territories Removing unlawful Israeli settlements in the Occupied Territories: Time to act" (Amnesty International)
"Land Expropriation & Settlements" (B’Tselem)
*6 "Israeli Forces Encircle Outposts Defying Order to Leave Gaza" (The New York Times)
"As painful as this Gaza pullout has already been, the 9,000 settlers here are dwarfed by the 220,000 living in the West Bank beyond the 1967 boundaries, let alone another 200,000 living in east Jerusalem, annexed by Israel but considered illegal settlers by much of the world. More than 80,000 settlers live in the West Bank beyond the route of the Israeli separation barrier - about nine times the number in Gaza."
*7 "Israeli Settlers Resist Gaza Pullout, Palestinians Call for Withdrawal from West Bank" (Democracy Now!)
*8 "THE KEY TO PEACE: DISMANTLING THE MATRIX OF CONTROL" (Israeli Committee Against House Demolitions)
*9 "FAQs on Refugees" (Al Awda)
*10 "Gaza Reality Check" (The New York Times、8/18/2005)
"Gaza represents the worst side of Israel's settlement movement. The densely populated strip is home to 1.3 million Palestinians - most of them refugees, or offspring of refugees. Each square mile of Palestinian land holds, on average, about 14,000 people. Until this week, the Jewish settlers occupied 33 percent of the land."*11 "Gaza Reality Check" (The New York Times、8/18/2005)
"Because of an army blockade of Gaza that started during the Palestinian intifada in 2000, the Palestinians who live there have generally been unable to cross into Israel for work. Israeli military checkpoints, set up in response to terrorist attacks from militant groups, also hamper the movement of Palestinians within Gaza. Unemployment among Palestinians is estimated at 45 percent, and most Gaza families live on less than $2 a day."*12 B’Tselem, and Hamoked; One Big Prison, pg. 84; Gaza Prison: Freedom of Movement to and from the Gaza Strip on the Eve of the Disengagement Plan;(この文書の概要は "New Report Warns Against Continued Strangulation of Gaza Strip after Disengagement" に。文書そのものへのリンクあり)
*13 "Giving Up Gaza" (Christian Science Monitor、August 12, 2005)
*14 "Encouragement of migration to the settlements" (B’Tselem)
*15 "The other uprooting" (Ha’aretz、Danny Rubinstein、August 15, 2005)
"During the course of the bloody conflicts of recent years, approximately 30,000 inhabitants of the Gaza Strip have been uprooted from their homes. Entire Palestinian neighborhoods along the Philadelphi route in Rafah, at the edges of the Khan Yunis refugee camp, along the route to Netzarim and in the north on the edges of Beit Hanun have been turned into heaps of ruins by the Israel Defense Forces. "[* 静かな<ジェニン>──ラファでゆっくりと進行している虐殺 ]
*16 "No Compensation" (Ha’aretz、Amira Hass、August 14, 2005)
*17 "Amnesty International condemns killing of Palestinians by Israeli settler, calls for urgent measures to end settlers’ impunity" (Amnesty International、18 August 2005)
"Israeli authorities must put an immediate end to settler violence" (Amnesty International、25 April 2005)
*18 "Failure to Probe Civilian Casualties Fuels Impunity" (Human Rights Watch)
"Beatings & Abuse" (B’Tselem)
"Excessive use of force" (Amnesty International、5 October 2004)
[* 壁建設現場でも少年が撃ち殺される ベイト・ラキヤ、ビリーンでも重体 ]
*19 "Palestinians under withdrawal curfew" (Laila El-Haddad, Al Jazeera, 17 August 2005)
"Settler Attacks Escalate" (Report, PCHR, 18 August 2005)
[* 独房から雑居房に戻されたようなもの──ガザ「撤退」 (後半部分)]
※ここの文章、データはご自由にお使いください。改変もけっこうですが、その場合はご自身の文責でお願いします。
日本語でのガザ地区基礎資料は: 「ガザ地区に関する資料集」 (パレスチナ情報センター)
ガザ「撤退」特集は: 「特集:ガザ入植地撤去と入植地再編」 (パレスチナ情報センター)
英語での基礎資料(IMEMC News編): "FACT SHEET: Gaza Disengagement: Facts, History, Political Reality"
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それなら良かった
コメント by :ビー
自分が途中で飽きてしまい、関西弁などを混ぜてちょっと遊んでしまいました。
でも、分かりやすいと言ってくれた人がいて、やってよかった。>モジモジさん、コメントをありがとう。
きちんと裏がとれている事実、数値をあげておかないとならない──それはある意味では当たり前ですが、そこにものすごく神経を使って、米国やイスラエル人や著名人権団体の出しているものだけをソースにしている参考リストは、けっこう泣かせます。。。ここまで「権威性」を盾にしないとならんのか、パレスチナのことは──と思うと。(だけど、英語ならどれだけでも情報があるじゃないか、という思いも沸々。英語を読める国の人々、もっとちゃんと気づいてよ!)
2005.08.22 (Mon) 15:14



コメント by :モジモジ
毎度毎度、ほんとにお疲れ様です。こうして整理してもらえると、俯瞰的に見ることができて分かりやすいので大変助かります。
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2005.08.22 (Mon) 13:02