2005.07.15
自治政府、「非常事態宣言」。混乱のパレスチナ [追加]
(以下は、先ほど発行したナブルス通信通信の内容です)
◇自治政府、「非常事態宣言」。混乱のパレスチナ
(文責:ナブルス通信編集部)
毎日新聞は15日(本日)付夕刊で
「イスラエル占領下のガザ地区で14日、パレスチナ武装勢力によるロケット弾攻撃を契機に、イスラエル軍が激しい空爆に踏み切るなど戦闘がエスカレートした。パレスチナ自治政府はイスラエルとの停戦合意を順守するため、治安部隊に武装勢力への武器使用を許可。治安部隊と武装勢力の間で激しい銃撃戦が起き、自治政府は同日深夜、ガザ地区に非常事態を宣言した。」
と報じた。パレスチナ武装グループの手製弾攻撃でイスラエルの女性が一人死亡、数人が軽傷を負うという事件に引き続き、このような状況になっている。
イスラエル軍の攻撃ヘリは15日未明を中心に少なくとも5発のミサイルをガザ地区に投下し、ハマスの文化センターなどを破壊している。これによる負傷者は報告されていない。現在、ガザは幹線道路が封鎖され、3つのパートに分けられて行き来できなくなっている。
■米国からの電話
イスラエル政府はロケット弾攻撃を非難し、「自治政府はロケット弾を止めるために何も行っていない。テロリストのインフラを自治政府が本当に排除するまで、イスラエルはフリーハンドでこのような攻撃を止めるためのいかなる手段も行使できる」(ギッシン報道官、ロイター15日付)と語った。
コンドリーザ・ライス米国務長官は、ネタニヤでのパレスチナ青年自爆攻撃後に、パレスチナのアッバス議長に対して「攻撃の責任者を厳格に処罰するように迅速に行動せよ」と強く要求しており、14日には再度、ライスからアッバスに電話が入ったと報じられている(AP、AFP15日付)。
それと同時にブッシュ米国大統領は公式に「パレスチナ自治政府への5000万ドルの援助凍結を解除」することを発表している。(ロイター)
■パレスチナ治安部隊と武装グループの衝突
このような中で、アッバス議長は武装グループの取り締まりに強く乗り出し、「ロケット弾を発射しようとした」とされる武装グループとパレスチナ治安部隊が衝突。ガザのハマスの本拠地であるザイトゥーン地区で、銃撃戦が行われたと報道されている。
銃撃戦での負傷者の数は未確定ながら、現在のところ、2名が殺されたことがわかっている。しかし、この2名は「通りがかりの武装していない若者」(ロイター)だという証言も出ている。他に治安部隊メンバー6名が負傷、他の負傷者は民間人だと病院は発表しているという。病院内で怒った負傷者の家族による発砲があったという話もある(ロイター)。
パレスチナ治安部隊によると「ガザのハマスメンバーが集結し、治安部隊の基地に発砲し、攻撃をしている」ということで、自治政府はガザが「非常事態にある」と宣言した。パレスチナ内務省は「ハマスはイスラエルや治安部隊を攻撃をすることで自分たちの政治的立場を強化しようとしている」と非難している。(IMEMC News)
かたや、ハマスの武装部門カッサム団は記者会見で「(自治政府が)パレスチナ人に銃を向けることは、自分たちが許すことのできるラインを超えている」と警告を発した(AFP)。
■前夜のパレスチナ
ガザの現在の状態はハマスと自治政府(ファタハを中心とする)が衝突しているように見える。
しかし、イスラエル女性を殺害したロケット弾攻撃については、実際には前日のナブルスでのイスラエル軍による活動家殺害への報復として、ハマスのカッサム団とファタハのアルアクサー団双方が責任を表明していた。(また、イスラエルの町、スデロトへのロケット弾攻撃は、イスラーム聖戦のクッズ団が責任声明を出している)。
13日水曜夜、イスラエル軍は西岸のナブルスへ侵攻し、ムハンマド・アッシ(27)を殺害した。アッシは隠れていた家をイスラエル軍に包囲され、そこから抜け出した時に射殺された。アッシの他にもパレスチナ人警官がイスラエル兵に撃たれて1人が死亡、1人が重傷を負っている。(なお、アッシらが隠れていた家の住人、英国籍のジャーナリスト、ハンナ・アレジさんが逮捕されている)。
ナブルスで殺されたアッシはイスラーム聖戦のナブルスにおけるリーダーだったと報じられているが、APはアッシはファタハのアルアクサー団のメンバーだという証言を載せている(真偽は今のところ不明*)。
[追加]*アッシをイスラーム聖戦のメンバーでネタニヤ事件に関与していると言っているのはイスラエル筋で、アッシはアルアクサー団メンバーだという記述が AICのニュース にもあがっていた。7.16追加
12日火曜のネタニヤでの自爆攻撃──イスラーム聖戦が実行責任を表明したと言われている──を受けて、イスラエル軍は即座にトゥルカレムなどへの侵攻を行っていた(トゥルカレムだけで40人が逮捕)が、13日に侵攻を受けたのはナブルスだけではない。20箇所以上の町、村への侵攻、捜索が行われたと報じられ、少なくとも13日の夜中だけで10人以上が逮捕された。
この侵攻や捜索は西岸全域で広く行われたとみられ、まったくパレスチナ内ニュースでも報じられていない場所での挑発的侵攻の様子がレポートされている。
"What kind of army does this?" (Zachary Wales writing from Occupied Birzeit, 14 July 2005)
逮捕者も出ていないビルゼイトでの侵攻は、イスラエル兵が町をゆっくりとジープでうろつき、次には音響爆弾を炸裂させて、その後にパレスチナの若者が投石を始めるという展開をみせ、まるで衝突を煽っているかのような様子がみてとれる。前夜にも近郊で衝突が起こっている音が聞こえてきたとレポートにはあり、イスラエル軍の活動が激しくなっていたことがわかる。
■2ヶ月で46名の犠牲者
パレスチナ内務省は5、6月の2ヶ月間でイスラエル軍によって46人が殺され、462人が怪我をさせられ、1249名が逮捕されたと発表したばかりだった。さらにはナブルスでの少年2人の殺害、壁建設現場での少年1人の殺害が続き、「『停戦』とはとても言えない」という声が高まっていた。
先月末の ナブルスへの不思議な大侵攻 を皮切りに不穏な状況が続いていたのが、一気に顕在化したのが今の状況だと言える。
ガザからの植民地(入植地)撤退期限を1ヶ月後に控え、隔離壁建設は加速し、東エルサレムは分断されかけ、さらに注目をまったく集めていないが、西岸ヨルダン川沿いの地帯に植民地(入植地)を増設する政策がイスラエルでは進行している。(→これについては、 「タナ村全村破壊」 に)。
ガザで今、起きていることは、これらの一部であり、さらに何がこの1ヶ月に起こるのかは計り知れない。
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[これまで既にお知らせしたことも含めて、ここ数週間の動きがわかる大事なトピックだけを並べます]
・ イスラエル、東エルサレム住民5.5万人を壁で切り離す決定
・ ヨルダン渓谷側もイスラエル植民地で固める (タナ村全破壊)
◇あとがき
上の記事は昨日、今日の20数本のニュース記事を元に書いたもので、詳細(数値や固有名)は記事によってだいぶ異同があります。とくにガザでの治安部隊とハマスの衝突に関しては、情報が錯綜しているので、よくわからない部分がありますが、ニュースを読む限り、かなり深刻な状態に見えます。
分析をしだすとキリがないくらい、いろいろなことが考えられるので、あえてそれは書かないようにしました。少なくとも、今の状態はイスラエルが求めている「和平」へのシナリオに非常に沿ったものだと思います。(ビ)


