2005.07.13
「私たち、どこに行けばいいの?」─東エルサレムの家屋破壊の新たな動き
イスラエルに一方的に併合宣言された東エルサレムでは、パレスチナ人への居住制限がずっと続けられ、家屋破壊も頻繁だったが、ここへ来て、家屋破壊が新しい段階に入ってきた。
イスラエルの「家屋破壊に反対するイスラエル委員会」(ICAHD)からのレポートを元にその様子を追ってみたい(ICAHDの報告者の壊れっぷりがすごい)。
7月4日に起きた東エルサレム北部、ベイト・ハニナでの家屋破壊を報告したものだ。
「今日ふたたび東エルサレムで家が壊された。早朝、ブルドーザーはイッサウィヤ近郊に向かい、そこでガソリンスタンドを壊した。その後、ブルドーザーはICAHDのスタッフ、ボランティアが駆けつけているベイト・ハニナのラムラウィ家とダミリ家に向かった。午前9時、丘の上に十数台の警察ジープと救急車が姿を見せ、家に向かって下りてきた。イスラエル人ボランティアのアモンとシャイは車輌が通れないように道の両側の壁に自分たちを鎖で縛り付けた。
しかし、国境警察の大部隊、特に特殊部隊yamamがこちらのほうへやって来るのを見たとき、何の望みもないことがわかり、二人は自分から鎖をはずした。アモンとシャイはとりわけ暴力的だという評判の特殊部隊になぐりつけられるのを恐れたのだった。……
……警官たちは現場地域を「警護」するために散らばり、女性の国境警官はアマル・ラムラウィを彼女の家の戸口から動かそうとした。アマルがそれに抵抗すると、さらに多くの警官が駆け寄った。ブツレム[イスラエルの人権団体]とオルタナティブ・インフォメーションセンターがこれを撮影していたが、軍にフィルムを抜き取るように命じられた。一人はこれを拒否し、論争と押し合いが続き、結局は家から離れたところまで引きずられていった。
アマルは最後には家の前から取り除かれ、2台のデウ・ブルドーザーが丘を下りてきて、9時半に破壊作業が始まった。
一方、ダミリ家では午前2時までに住人が2部屋だけのつつましい自分たちの家から持ち物を運び出していた。家から家財を運び出すように[イスラエル側が]契約した外国人労働者はすることがなかった。午前9時54分、次のブルドーザーがやってきて、家を壊しだした。ダミリ家のヌールと妻のアテフは家から離れた安全な場所に立って、その様子を眺めていた。ブルドーザーが家を壊し、基礎を掘り返すのに要した時間はきっかり7分間。このようにして、6人が2年間で2度目のホームレスになった。
ヌール・ダミリはエルサレム警察に28年間勤めてきたが、同じ警察官たちが自分を2度もホームレスにすることをやめさせることはできなかった。絶望のさなかで、ヌールは完璧なヘブライ語を使い、警官たちと兵士たちに叫んだ。
彼と家族はいったいどこに行けばいいのか──、と。経済的な、個人的な自分の「資源」がもう底をついた中で、この質問ほど根本的なものはない。
午前10時25分、ブルドーザーはすべての仕事をやり遂げ、丘を登っていった。そこに残されたのは家を失った4人の大人と13人の子どもたちだ。ブルドーザーはワディ・アルダムの無人の建物2つをさらに壊した。
今日、イスラエルの内務省によってさらに3軒が破壊されている。1軒はアブ・スネイナ家のものだ。ここは屋根が取り払われた。頭の上に屋根がない状態で3人の障害を持った子どもたちが眠っている。ブラボー!内務省。他の2軒の詳細は私たちに届いていないが、内務省が自分たちの素敵な仕事を誇りに思っていることは間違いなく、私たちがその詳細を喜ぶことを邪魔しないだろう。内務省に勝利あれ!( Let the Ministry for the Interior triumph!)
昨日、今日と2日間で9軒の家が破壊されたことをみるに、私たちが新しい家屋破壊の大きな動きの始まりに立っていることは確かだ。(これは何十軒もの家屋破壊命令が取り消されていないシルワン地区を除いても、なお)
「家屋破壊に反対するイスラエル委員会」(ICAHD)は、ガザからの「撤退」が近づき、破壊される家の数が増加することを深く懸念している。私たちはメディアが家屋破壊の報道にどんどん気弱になっていくのを心配している。事前に知らせを届けておいたにもかかわらず、2人のパレスチナ人写真家を除いてメディアはどこも来なかった。
最も心配をするのは、イスラエルが言うところの「それらの家は《不法》に建てられた*ので取り壊すべきであり、ここには何の問題もない」という言説を多くの外交官、政治家、ジャーナリストが信じているように見えることだ。……」
*「《不法》に建てられた」と言っても、パレスチナ人が家を新築、または増改築することに対して許可が出ることは滅多にない。
*この報告は2バージョンありますが、これは長いほうの "Where shall I go now?" A new wave of house demolitions in East Jerusalem を原文としました。
短いヴァージョンのこちらには ブルドーザーが家を破壊していく写真 などが載っています。
7日にもシルワン地区などで、家屋破壊がなされています。 "Is the world blind?" Two more families lose their homes in East Jerusalem にレポートと、写真が(子どもたちのお人形が地面に転がっている写真には胸が痛む…)載っています。
この地域の詳細地図は:
Ghettos in East Jerusalem
見ると、一見ウェッとするほど込み入ってます。でも、この地図を見ないと本当の問題はわかりにくいのです(複雑なのは、何にせよ、理解をされにくい…)。
比較的濃い青系がイスラエル植民地(入植地)です。灰色がパレスチナ人居留地。形よりも色に着目すると、シンプルな整理がつきます。
次に黒の実線、灰色の実線で示されている「隔離壁」に注目します。すると、東エルサレムでは文字通りパレスチナ人居留地区が分断され、小さい島のようなパレスチナ人のエリア(黄色の縁取り)と、残りの「地」の部分に見える「旧市街、植民地、パレスチナ人居留地区」からなる部分に分かれているのがわかります。
そして、今回のレポートにあるように、家屋破壊が行われているのは、この「地」の部分にあるパレスチナ人居留地区(ベイト・ハニナ、イッサウィヤ、シルワンなど)であることがわかります。
このまま破壊が続けば、隔離壁のイスラエル側からエルサレムと一体になって生きてきた(そしてエルサレム市民権を持つ)人々が一掃され、東エルサレムは事実上、イスラエルだけのものになるということが予測できます。
※この文章は 東エルサレム全体の状況を書いた次の記事 へと続きます。
※さらなる東エルサレムでの家屋破壊: 「公園のほうが大事か?!」 (7月25日付)
■ コメント&トラックバック (4 件)
同じく……
コメント by :百合ノ介
なんかもう、ギリギリっとなってしまいます、こういう記事を読むと。(あ、歯ぎしりしてしまうってかんじで)
世の中の不正さって、どうしようもないのか〜〜と叫びたくなりますねえ。しかし、ポチポチと人に伝えたり、イスラエル政府支援企業をボイコットしたりしていくしかないのかなーと思います。
米国人にこういう問題をもっとうまく伝えられないのかなぁ。(カギは米国にあると思うので)
2005.07.14 (Thu) 01:30
自分で書いておきながら
コメント by :ビー
あすまぁさん、百合ノ介さん、ありがとうございます。私も自分で書いておきながら、うちのめされる気分になることが多くて。でも、書いておくくらいしかできることがないのも現実です。
という自分のためにイスラエルのジャーナリスト、アミラ・ハスの言葉を書きつけてみました。3つ後に出してあります(彼女のエネルギーを少しでも分けてもらいたい…)。
2005.07.15 (Fri) 00:46
アミラ・ハス
コメント by :あすまぁ
アミラ・ハスの本は書店で発売時期頃に見つけて気になってしましたが、値段にビビッてまだ買っていなかったりします。(^^;
パラパラと捲った印象では読み応えのありそうな、私の知りたい内容のようでしたが、ビーさんが書いてくれている印象だとなかなかにパワーのみなぎった方のようですね。
根性決められたら買おうと思います。はは。
それにしても、ここ数日の記事はかなり堪えます。なんか、我ながら間違ってるなぁとは思うけれど、パレスチナ人が殺される事よりもこうした住居を奪われるなどの行為の方がもっと自分に無力感を与えてます。だってただ「読んでる」だけなのに、この行為さえ苦痛に感じますからね…。
そうそう。GoogleMap(http://maps.google.com/maps)のサテライトでパレスチナ・イスラエルを見たら、ホント、前にビーさんがこちらに載せてた通り緑の量の差異がくっきり。いつ撮影の衛星写真を採用してるか分からないですが…。(因みにガザやラファで検索してみたら「○○という場所はありませんでした」でNGでした。エルサレムはイスラエルのエルサレムと出てきました。試しに京都市を検索したら一発で出てきたのに…)
2005.07.15 (Fri) 22:39



泣けてきます…
コメント by :あすまぁ
どうしてこんな、私たちの住む日本という国では想像し難い事が当たり前のようにパレスチナでは行なわれているのか…。
どうして、こんな、常識ある人から見れば目を覆いたくなるくらいの非常識な事が「ニュース」として日本で見ることが出来ないのか…。
パレスチナ人による自爆テロで死者を招いたのは4ヶ月以上ぶりとビーさんが書いてくれてますね、それでメディアでのこの大きな扱われ方、イスラエルによるパレスチナへの暴挙きわまりない毎日続く非人道的行為はまずもって目に入ってくることはない。この落差。。。
そして、これだけの気持ちにさせられてなお、私はきっと海外に行く時にはあの携帯に付けているパレスチナ国旗をあしらったキーホルダー(寺畑由美さんの講演の時に買ったもの)を外してしまうと思う。怖くて。
こんな臆病な私に一体何が出来るんだろう…と思いつつ、でもこんなにやるせない思い、泣けてくる思いだけは募ります。
なんか…現実を知ることは大切な事だと思うんだけれど、私はそれだけで、彼らに何にもしてあげられてないなぁって…。苦しいなぁ。
すいません、こんな独り言書いちゃって。
トラックバック from:
2005.07.13 (Wed) 23:31