2004.11.26

マルワン・バルグーティー、議長選出馬 [追加2]

今、発売されている『ビッグコミック』の「ゴルゴ13」でイスラエルの高官にゴルゴが雇われる話が出ている。それが「イスラエル ガザ地区」とか「エルサレム─イスラエル─」とか説明がついているとタレコミがあった。見てみると、たしかに!何なのだろう?正確に書けば「イスラエルの占領下にあるガザ地区」なんだけどな。

話自体は興味深いものがある。透明人間みたいになれる特殊スーツ(光学迷彩服)という武器を手にしたイスラエル軍人が暴走してパレスチナ人レジスタンスメンバー(彼から見たら「テロリスト」)を次々殺害し、歯止めがかけられなくなった軍上層部はゴルゴにこの軍人の殺害を依頼するというもの。

次の会話は秀逸だった。

軍高官「確かにイスラエル政府は、彼ら(抵抗勢力)を"和平の障害"と位置づけ、その"排除"を公言しては、いるのだが……」

ゴルゴ「排除とは……"殺害"と、とらえていいのだろう?」

軍高官「それについては"肯定"も"否定"も出来ない……」

ゴルゴ「……」

さて、マルワン・バルグーティーが1月のパレスチナ自治政府議長選に出馬するという報道があちこちで流れている。「獄中からの出馬」という見出しなどをつけたところも。

M・バルグーティは6月にイスラエルで終身刑5回分の判決(テロ活動に関与し、イスラエル人殺害を行ったというかどで)を受けて服役中のファタハの活動家で、それなりに「強硬路線」だと言われている。自治政府内での権力を持っているアッバスがあまりに人気がないため、バルグーティの出馬はファタハの分裂を誘うかもしれないという見方も紹介されていた。

イスラエル政府は今のところ、「バルグーティーの超・法規的出獄はありえない(自分たちは法治国家だから)」と言っているが、どうなるかはわからない。超・法規的暗殺は当然のようにしているのだからね。イスラエル・アラブの議員が現在、独房に置かれているバルグーティーを訪ねることを許可されたという報道も出ている。

で、このバルグーティーについて、「イスラエルはアラファトの後がまとして、バルグーティーを必要としている」という見方をしている人もいる。

というのは、イスラエルにとってアラファトは都合の良い存在だった。パレスチナのリーダーとしてある時はオスロ合意のパートナーであり、ある時は「テロリスト」の親分として「交渉相手」じゃなくなるという存在として。

パレスチナ人の支持がない穏健派のアッバスでは、この役がつとめられない。今、シャロンが行おうとしている一方的な計画では、「交渉相手」がいるほうが都合が悪いという事情もある。

そんなときにアラファトの替わりをつとめられる(しかも、ハマスやイスラーム聖戦では困るので、ファタハの中で)人材が必要だという見方だ。

実際にハマスやイスラーム聖戦に限らず、ファタハの活動家も目立つ人はこの間どんどん暗殺されていった。ナブルスのリーダーだった人とか(名前を失念。この夏に暗殺された)。ジェニンのリーダーであるズベイディも何度も暗殺未遂に遭っている。

そのなかでなぜマルワン・バルグーティーだけが暗殺もされずに逮捕されて裁判を受けているのかというのはひとつの謎でもあった。だから、バルグーティー自身の政治信念とは無関係に、イスラエルはバルグーティーをひとつの駒として温存しているという見方もある。

そして、逮捕前はさほど知名度が高くなかったバルグーティーが、逮捕→「解放運動」という流れの中で、ひとつの象徴となり、知名度を高めていったということも指摘されている。公判の度に手錠をされながらも、Vサインなどを送っている姿が大きく報道され、バルグーティーは「英雄」になっていったとも言える。

ま、これからどうなるかを見ているしかない。釈放はあり得るのかなぁ。それにしても複雑な事情だこと。このねじくれ方がイスラエルらしいと言うしかないけれど。

[追加]下のコメントに入れてもらった文章は、私がざざっと乱暴に書いたことを丁寧に展開してくれています。というわけで、リンクをはっておきます。 『小アラファト』バルグーティー氏

[追加2]一転して27日にはバルグーティーの選挙出馬断念が伝えられています。ま、やはり様子を見ているしかないですね。

[追加3]12月2日付のニュースでは立候補した、という報道が。いったい、どうなることやらわかりません。

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■ コメント&トラックバック (10 件)

「小アラファト」?

コメント by :早尾 貴紀

 ホント、どうなることやら、です。はっきり言えることは、釈放するかどうかは、イスラエルの決めることだ、ということ。選挙だ民意だと言っても、最終的にはイスラエルの意に沿うかどうかだけが問題となるような茶番を、民主主義とは言えないと思います。
 パレスチナ情報センターのスタッフ・ノートに、「『小アラファト』バルグーティー氏」という文章をアップしておきました。
http://palestine-heiwa.org/note/index.html
 やや細かくイスラエルの論理を追いましたが、趣旨としては上でビーさんがまとめられたとおりです。

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2004.11.27 (Sat) 01:49

ポイントは・・・

コメント by :ダルヴィーシュ見習い

いちばんの願いは、転じてなんとかで、
ファタハとハマスが共闘のきっかけを
もってくれれば・・・だったのですが、
そちら方面は動きがないようで・・・

・・・そういえばまったく別の話ですが、
ユースフ・イスラム(かつてのキャット・
スティーブンス・アメリカのフォークロック
系の一時代前のシンガー。イスラームに改宗し、
前述の名前に)が9/24にハマスへの資金
提出を理由にアメリカ入国を拒否されたとか・・・

ハマスは、テロ組織とは一絡げに言えない存在
なのですが(あらゆる町に、民衆支援のための
たくさんの下部組織があります)。

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2004.11.27 (Sat) 15:48

google!

コメント by :wattan.

>軍高官「それについては"肯定"も"否定"も出来ない……」

モサドの常套句からのパクリでしょうかネ!

ゴルゴ 「ゴッゴル…ゴッゴル!」

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2004.11.27 (Sat) 23:22

「すべてを決めるのは我が輩である」

コメント by :ビー

wattan.さま、あの台詞は核兵器保有について、イスラエルが取っている態度そのものなんです。シモン・ペレス元首相の迷言に「その質問は自分にしているんじゃないかね?」というのもありました。最近の「自衛隊が活動しているところは「非戦闘地帯」だ」という発言並みですね。

ダルウィーシュ見習いさま、結局は「政争」レベルじゃなくて、本当にパレスチナが何を目指すのかをきちんと議論して見据えていくことが必要なのだと思います。それができる下地がみつかりませんねぇ。。。選挙といっても、早尾氏が指摘しているようにそれなりの有力活動家は暗殺されたり、投獄されている中では、イスラエルが「残しておいた」人材のなかでのチョイスでしかないですから。

キャット・スティーブンス=ユースフ・イスラムさんのニュースは聞いた記憶があります。元々、米国籍だったんじゃないのでしょうか。よくわからないですね(それにしても、言いがかりはどうとでもつけられますね)。

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2004.11.29 (Mon) 18:10

なんにしても

コメント by :ダルヴィーシュ見習い

功罪半ばするとしてもアラファト氏の存在は
あまりに大きかったので、小異を捨てて、
大同団結して欲しいんです、パレスチナに。
でないと余計にイスラエルに引っ掻き回されますからね。
ハマスは自爆テロに肯定的なところは、
ワタシでも受容できないのですけれど、
なにせ組織力はすごい。どこの街へ行っても、
たくさん関係施設がありますから。

え〜、ついでにキャット氏は英国人だった筈です。
英国でイスラームの学校施設の政府認可を
出させるのに成功したりしているようです。
一方、日本でも五十嵐教授が殺害された例の件では、
原作者に対してのファトワを
支持していると噂されています。
事実ならちょっと困ったワッハービー系ですが。

PS 数学関係は苦手ですが、
なんか和めそうですね。写真の作品。
子どもの頃のスピログラフなぞ、
なぜか思い出したりして(あ〜歳がばれる)。

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2004.11.30 (Tue) 08:27

もう一人のバルグーティと安定した生活

コメント by :安藤直美

ガザの友達と、大統領選のことを電話で話したとき、

私:「ムスタファ・バルグーティも出馬するんだってね。で、投票どうするの。聞いてもいい?」
友達:「個人的にはムスタファ・バルグーティが好きだけれども、アブー・メイゼン(アッバス)に投票するよ。」
私:「えー、どうして?だってムスタファ・バルグティのナショナル・イニシャティブを支援していたじゃない?アブー・メイゼンはギャングの一人って言っていたじゃない?」
(注:この友人は、常々パレスチナ自治政府(PA)のトップや幹部たちを「ギャング」呼ばわりしているー彼等だけが自分たちの懐を暖め、庶民の生活が改善されないので。)
友達:「アブー・メイゼンが大統領にならなければ、内部的にも対外的にもまた混乱が生じる。もう混乱はうんざり。安定した生活がほしいんだよ。」(続く)

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2004.11.30 (Tue) 19:10

安定した生活(続き)

コメント by :安藤直美

((長くなってしまってごめんなさいね。))
(続き)
非常にプラクティカルな彼。去年アブーメイゼンが首相になった時、「パレスチナ人の夢は時ともに小さくなっていく。もともとのパレスチナを手に入れる夢から、67年ラインまでのパレスチナ。今はサラハッディンがエレズからラファまで(道路閉鎖なしで)ストレートにいけるようになるんだったら、アブー・メイゼンを好きになるよ。」とも言っていた。

彼だって、イスラエルに自分たちの権利(帰還権とかで)妥協をしたくないし、アッバスが大統領

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2004.11.30 (Tue) 19:11

安定した生活(さらに続き)

コメント by :安藤直美

((あー、途中で分が切れてしまった))

。。。彼だって、イスラエルに自分たちの権利(帰還権とかで)妥協をしたくないし、アッバスが大統領になったら今後の和平交渉(が再会されたら)で幾つかの点について妥協しなくてはいけなるかもしれないこともわかっている。
一方彼は、ちゃんと安定した仕事が続けられて、ミサイルが落ちてこない安全な環境で生活し、自由に移動できる日が一日でも早く来ることを切実に願っている若者の一人でもある。とりあえず安定がほしい!状況が本当に人々を追い込めているんだなあと思った
(終わり!)

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2004.11.30 (Tue) 19:13

なるほど……

コメント by :ビー

安藤直美さま、パレスチナ人の胸中はいつも複雑なんですね。それがとてもよくわかるものでした。どうもありがとうございます。

「妥協を重ねて、パレスチナと言えるものではない現状を追認したくない」。しかし「ささやかでも平和は欲しい」。引き裂かれているのですね。

少し、上のコメントに補足を。

ムスタファ・バルグーティは、マルワン・バルグーティのいとこ(確か…)で、医師として医療関係のNGOを束ねてきましたが、「ナショナル・イニシアティブ」という党派を作り、民主的なパレスチナを非暴力の闘いで勝ち取ろうという動きをしています。故エドワード・サイードが後押ししていた、パレスチナの新しい潮流です。

「サラハッディンがエレズからラファまでストレートに…」というのは、ガザの北端から南端まで貫く幹線道路のサラハッディンを何の障害もなしに行けるということです。たぶん50km位なので、普通なら1時間で行けるのでしょうが、今はサラハッディンは使えないところが多く、また、検問所が閉まればどれだけ時間がかかるのかわからない状態になっています。

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2004.11.30 (Tue) 19:49

スピログラフ…

コメント by :ビー

ダルヴィーシュ見習いさま、お互いに「歳バレ」ネタはやめましょうね(笑)。

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2004.11.30 (Tue) 19:53