2007.01.22
長居公園で野宿者テントが強制立ち退きを迫られている
昨年1月の靫(うつぼ)、大阪城公園での強制代執行に引き続き、大阪市は長居公園でも野宿者たちのテントを強制立ち退きさせようとしている。今のままでは1月の終わりあたりに立ち退きが強制的に行われてしまうかもしれない。
私の脳裏には一昨年自ら死を選んでしまった知人のAさんが浮かんでくる。Aさんは事業に失敗した頃から知人、友人との関係を絶ち、住みかを失ってからはドヤ生活をしていた。そして、その生活が行き詰まったときに、東京のビルから飛び降りて死んでしまった。死を知らされた私たちには、Aさんがドヤ生活で書きつづっていた文章が数編まとめられた薄い冊子が届けられた。
故人の文章を勝手にネットにあげるのはやめておく。それは公開することを前提にして書かれたものだとは言えないから。ただ、そこには、どんどんと生きる場を狭められていき、おいつめられていった心情が詰まっていた。
Aさんのことを思うとき、「もし、私たちの社会が家を失い、野宿になった人々に尊厳を認めているようなものだったら」という気持ちが何度もわき上がってくる。Aさんは自殺するほど追い込まれなかったのではないか──。
死を知らされた後では、何の術もなく、ただAさんを悼むことしか残されていない。と同時に、多くのAさんのような人が、生き延びていこうと路上で、テントで苦闘しながら生きていることに思いが至る。
私には野宿の人々がそういう意味で「サバイバー」であり、社会のなかできちんと尊厳を守られていいはずの人々だと思える。
「私は3年前まで調理師として働いていましたが,失業が原因で野宿生活を始めました。万策尽き果てて,飯を食うために止むを得ず,生まれて始めてゴミ箱に手を入れようとしたとき,私がどれほど躊躇したか,あなた方に分かりますか。生きるために必死だったからこそ,それができたのです。決して好き好んでできることではありません。それでも何とか,廃品回収の仕事をしながら食いつないできました。長居公園内に定住して生活していれば,地域住民の人たちとも関係ができてきます。
野宿問題に関心がある人たちも訪れてくるようになりました。そのうち,各方面に人間関係ができて,アルバイトもできるようになりました。今,私は自立しています。自力で稼いでいます。アパートを借りて家賃を払えるほど稼いではいないけれども,公園の片隅で野宿しながらであれば,何とか生活できています。」
強制立ち退きを強行されそうになっている長居公園の住民、Sさんが大阪市長に宛てた弁明書からの一節を、ためらいつつも引いてみた。
このような生を踏みつけにしてまで、何を大阪市はしたいのだろう?「世界陸上」が開催されるから、野宿者を「見えない」ようにしたいというだけなのだろうか。
野宿者をそのように扱うことは、本当は私たちの生きていく領域をどんどん押し狭め、より「生きづらい」社会を作るだけではないのだろうか、と私は考える。
「共同体は、人が自分自身を裸の人間、困窮した人間、見捨てられた人間、死にゆく人間に曝すときに、形づくられる。」
(アルフォンソ・リンギス『何も共有していない者たちの共同体』より)
(今、4人の公園住民からの弁明書が公開されているが、どれも全文を多くの人に読んでもらいたい)
関連リンク:
大阪市に「抗議・要望書」を送付 (学者、弁護士、司法書士からの抗議文)
Kさんの弁明書では
「あなたがたは、我々のテントについて都市公園法を持ち出して不法占拠と言いたがるが、それを持ち出すのであれば我が国の批准するところの国際人権規約の居住権についてももっと学んでほしい。あなたがたが認めたがらなくとも、儂には居住権ゆうもんが存在するのです。」
と書かれている。
フランスでは野宿者や適切な家を持たない者にたいして、低家賃住宅を確保するほか、国や自治体に各自が住居権を要求できるシステム(「対抗的」住居権)を2月中に法制化するという。(詳しくは 「サン・マルタン運河憲章」 [先見日記・飛幡祐規]に)
アジア居住ネットワークが長居公園の件で、大阪市に宛てた抗議文がこのことに触れているので、転載させてもらう。
大阪市長居公園で近日中に行われると思われる「行政代執行法」による強制排除に対して、大阪市の関係機関に対して本日、下記の抗議文を送付しました。皆様からも関係機関への抗議宜しくお願いします。
抗議文
- 大阪市経営企画室 電話・06-6208-9720
- 大阪市ゆとりとみどり振興局 電話・06-6615-0614 FAX06-6615-0659
- 大阪市市民局 市民部広聴相談課 電話・06-6208-7333 FAX06-6206-9999
2007年1月22日
大阪市長 關淳一 殿
大阪市経営企画室 室長殿
大阪市ゆとりとみどり振興局総務部管理課 課長殿
大阪市市民局市民部公聴相談課 課長殿私たちアジア居住ネットワークは日本やアジア諸国の居住権について関心を持つ日本 の専門家と市民のグループです。私たちはタイ・バンコクに事務局を置く「居住権の ためのアジア連合」(ACHR : Asian Coalition for Housing Rights)とともに活動しています。この連合は、国連の諮問資格を持つ国際ハビタット連合のアジア代表を務めています。
2006年1月30日、靭公園並びに大阪城公園居住の「ホームレス」・野宿を強いられる人たちへ「行政代執行法」による強制排除の手続きが行われたことは大変遺憾でした。
また、2007年1月15日、長居公園において大阪市による公園整備工事を名目とした公園 内居住者に対する「除去命令書」の交付、近日中に行われると思われる「行政代執行法」による強制排除、並びに、公園周辺に野宿を余儀なくされている人々への退去強制に対して、厳重に抗議いたします。これらの行為は2002年8月7日に成立した「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」および同法成立に際しての衆議院厚生労働委員会決議に明示された精神に反するもので、実質的なホームレスの締め出しです。私たちのグループは、これら一連の出来事が「国際都市・大阪」でおこっていることを深く憂慮します。
また、1996年、トルコ・イスタンブールで開かれた国連人間居住会議(ハビタットII)そして世界都市・地方自治体会議でも、居住権は人間の基本的権利であると認められています。日本政府を含む全会一致で採択されたハビタットアジェンダでは「すべての人が適切な住まいを、すなわち健康で安全で権利を保障され、入手しやすく、賄える範囲にあり、基本的なサービスや利便が整えられた住居を有し、そして居住差別からの自由と保有条件の法的保護を享受する」とされています。また、日本政府も批准した国際人権規約に公的解釈を与える国連社会権規約委員会「一般的意見7(強制立ち退き)」の第17段落は、次のように述べています。「立ち退きによって個人がホームレスになり、人権を蹂躙されるようなことがあってはならない。また立ち退きの犠牲者が自分の力によって必要な手段をとることができない場合には、国家側はすべての適切な手段、そしてありうる資材を用いて、代替住宅、再定住、生産可能な土地などそのケースに適した援助を確実に行わなければならない。」 大阪市は実質的な締め出しや立ち退きを強制するのではなく、むしろ野宿を強 いられている人達に対し、彼らの居住権・人権を尊重した対応を行うべきではないでしょうか。それが国際都市・大阪として恥ずかしくない誠実な対応ではないでしょうか。
「行政代執行法」による強制排除、並びに公園内野宿者の退去強制は、「ホームレス の自立の支援等に関する特別措置法」並びに「国連規約」の精神に違反するものです。私たちは大阪市が居住権を尊重するという国際的な潮流に沿った形でこの問題に関わるよう、昨年同様、次の5点を強く要求します。
1.行政代執行に伴う強制排除、並びに公園内野宿者の退去強制の中止。
2.当事者との直接対話・話し合い。
3.適正なシェルターの保障。
4.自立支援のための労働の提供。特に高齢者でも就労可能な労働機会の提供 。
5.2006年9月27日の不法逮捕・長期拘留者に関し、早期釈放を関係機関に働きかけ。
大阪市の真摯な対応を期待しております。
・アジア居住ネットワーク(ACHR TOKYO)
[太字強調は転載者による]
[このブログ内での [リンク集]野宿・排除・公園暮らし ]
■ コメント&トラックバック (4 件)
2・5長居公園からの野宿労働者(ホームレス)排除の中止を求めます
コメント by :
ちょうど一年前の昨年1月の末に、大阪市は600人もの職員を投入して、貧困ゆえに大阪城公園と靱(うつぼ)公園で寝泊りを余儀なくされていた野宿労働者を襲撃しました。市の職員たちは野宿労働者の家財道具のいっさいをバールなどで粉々に破壊しつくした上ですべてを強奪し…
トラックバック from:旗旗
2007.02.02 (Fri) 03:23



【賛同要請】「釜ヶ崎労働者の住民登録消除の中止と救済策を求める要求書」
コメント by :あおざかな
もうどうなってるんだ大阪市という感じですが、長居公園の件と同時並行で、日雇労働者・野宿者が釜ヶ崎解放会館等においている住民登録が職権消除されようとしています。不躾なTB恐縮ですがよろしくお願いいたします。
トラックバック from:あおざかなの買物日記
2007.02.01 (Thu) 17:43