2012.11.17

【ナブルス通信】「ガザで殺人を行っているのは誰か」ーーノーム・チョムスキーらによる報道への呼びかけ

「ガザで殺人を行っているのは誰か」ーーノーム・チョムスキーらによる報道への呼びかけ

2012年11月14日

欧米各国でこれまでの戦争でなくなった軍人の追悼が行われた(第一次大戦の終結した)11月11日、イスラエルは一般市民に銃口を向けました。翌11月12日の朝刊はこれまでの戦争や現在進行中の戦いで犠牲になった人に関する報道であふれ、読者はこうして新しい週を悲痛な思いで迎えました。

しかし、これらの報道には、今日の戦争の犠牲者の大半が一般市民であるという事実に言及するものはほとんどありませんでした。

11月12日の朝の報道には、週末中続いたガザへの軍事攻撃に言及するものも、ほとんどありませんでした。カナダのCBC、『グローブ・アンド・メール』紙、モントリオールの『ガゼット』紙と『トロント・スター』紙、『ニューヨークタイムズ』紙、英BBCをざっと眺めた限り、これが当てはまります。

11月11日(日曜)の「パレスチナ人権センター(PCHR)」からの報告によれば、それまでの72時間に、2人のパレスチナ治安要員*だけでなく、3人の子どもを含む5人の一般市民がガザ地区で殺されました。

そのうち4つの命が失われたのは、サッカーをする子どもたちに向けイスラエル軍が砲撃したからです。この砲撃で4人が死亡しただけでなく、6人の女性、12 人の子どを含む52人の一般市民が負傷しました(この文を書き始めてからも、パレスチナ人犠牲者の数は増え続けています)。

ガザにおける殺害を報道する記事でさえも、論点はパレスチナ治安要員が殺されたことに集中する傾向があります。たとえば、11月13日にCBCの世界ニュースが報道したAP通信の記事のタイトルは『イスラエルはガザの武闘派に対する標的殺害の再開を検討中』であり、一般市民の死傷については何も言及がありませんでした。その報道ではイスラエルの殺害は『目標を狙った暗殺』のように描かれました。犠牲者の大半が一般民間人であるという事実は、イスラエルの攻撃が『目標』を狙ったものというよりは、『総体』を対象とした殺害であり、イスラエルがパレスチナ人という総体に罰を与える犯罪を犯していることをあらためて明らかにしました。

11月12日にCBCニュースで放送された別のAP電は『ガザからのロケット砲撃で、強まるイスラエル政府への圧力』と伝え、イスラエル人女性が自分の居間にできた天井の穴を見つめる写真が添えられていました。もちろん、ガザ地区の数えきれない犠牲者、死者への言及もなければ、それを伝える写真もありませんでした。

同じように、11月12日のBBCの報道は『ガザからの激しいロケット砲撃の再開にさらされるイスラエル』でした。同じ傾向は、ヨーロッパの主要メディアでも見られます。

ガザから発射されるロケット弾は一人の犠牲も出していないにも関わらず、報道は圧倒的に、これに集中しています。報道が目を向けないのは無数の重傷者、死傷者を出しているガザへの爆撃であり空爆です。メディア学の専門家でなくても、私たちが目にするのは、ひいき目に見ても粗悪なゆがめられた報道であり、最悪の場合、読者を故意に不正に操作しようとしているものであることがわかります。

さらにまた、ガザ地区のパレスチナ人犠牲者に言及する記事でさえ、イスラエルの攻撃はイスラエル兵を負傷させたガザからのロケット砲撃に対する報復であるという論調に終始しています。しかし、今回の事件を時系列で見ると、発端は11月5日、アフマド・アル=ナバヒーンという精神障害を持つ何の罪もない20才の青年が国境近くをぶらついていて撃たれたことでした。かけつけた医者たちは6時間も足止めをされ、その遅れが彼の命を奪ったに違いないと思っています。

そして、11月8日、家の前でサッカーボールを蹴っていた13才の男の子がガザ地区に戦車やヘリコプターを伴って侵攻したイスラエル軍の銃撃で殺されました。

したがって、11月10日に4人のイスラエル兵が国境付近で負傷したのは、ガザ地区で暮らす一般市民が殺された後のことであり、すでに進行中の事態の一環であり、それが(今回の攻撃の)きっかけとはなりえないのです。

私たち、下記に署名する者は、最近、ガザ訪問から戻りました。私たちの中にはソーシャルメディアなどを通じて、ガザに暮らすパレスチナ人と連絡をとるものもいます。ガザの住民は2晩続けて眠ることができませんでした。人口が密集するガザ地区内の様々な目標に向けた無人航空機、F16戦闘機の飛来、無差別爆撃が継続的に続いたからです。

これらの攻撃の意図は住民を威嚇することであり、それが効果を上げていることは、私たちの友人たちの話からわかります。フェイスブックへの投稿がなかったとしたら、ガザで暮らす普通のパレスチナの一般市民が、どれほどの恐怖にさらされているのか、知ることはできなかったでしょう。イスラエルの市民が置かれている恐怖やショックが世界の耳目を集めているのとは、際立った違いです。

偶然ガザにいて、シーファ病院の緊急病棟で治療を助けたカナダ人医師は次のように報告しています。「負傷者は全員一般市民であり、銃撃による複数の刺創があった。脳や首の損傷、血気胸、心膜タンポナーデ、脾臓断裂、腸管穿孔、切り裂かれた四肢、トラウマを引き起こす切断。これらの治療をするのに、モニターもなく、聴診器も足りず、超音波機械も1台だけ」

「犠牲者の数が多すぎて、重傷でも致命傷ではない怪我人のほとんどは、翌朝に再診断するということで、帰宅させられた。突き刺さった弾片の傷はおぞましかった。表面の傷は小さいのに体内の広い範囲が損傷していた。 … 麻酔のためのモルヒネもほとんどない」

どうも、ニューヨークタイムズ紙、CBCやBBCにとっては、このような情景は報道に価しないようです。

西側メディアがパレスチナ人の弾圧に関して偏っており、不正を働いていることはこれが初めてのことではなく、これまでにも指摘されてきたことです。

にもかかわらず、イスラエル政府は米国、カナダ、EUなど私たちの政府からの暗黙の了解のもと、資金面でのサポート、軍事支援、道徳的な支援を受けながら、人道に反する罪を犯し続けています。

ネタニヤフは西側からの外交支援をえて、ガザへの新たな侵攻作戦を展開しています。これがあらたな『キャスト・レッド(いわゆるガザ紛争、2008~9)』につながるのではないかと心配しています。実際、最近の情勢、死傷者の数の増加を見るにつけ、段階的な拡大はすでに始まっていることがわかります。これらの犯罪に、広く一般社会が激怒を示さないのは、犯罪の事実が正確に報道されなかったり、ゆがめられて報道される計画的なやり方によるものです。

私たちは、これらの行為をしっかりと報道しない主要(商業)メディアに対して憤激を表明します。事実を覆い隠そうとする組織的な方針の道具になることを拒否せよと、報道機関で働いている世界中のジャーナリストに呼びかけます。

世界の市民には、独立系メディアなどから情報を収集し、どんな手段を使ってでも、できる方法で、自らの良心を声にするよう、呼びかけます。

Hagit Borer, linguist, Queen Mary University of London (UK)

Antoine Bustros, composer and writer, Montreal (Canada)

Noam Chomsky, linguist, Massachussetts Institute of Technology, US

David Heap, linguist, University of Western Ontario (Canada)

Stephanie Kelly, linguist, University of Western Ontario (Canada)

Máire Noonan, linguist, McGill University (Canada)

Philippe Prévost, linguist, University of Tours (France)

Verena Stresing, biochemist, University of Nantes (France)


翻訳:折口学

*「治安要員」と訳しているのは、原文でsecurity personnelとしているところで、通常よく使われるresistance member や militant という用語を故意に使用していないため、こう訳出した。

**日付に関しては、時差の関係か、1日ずれている箇所もある。

原文: Who is doing the killing in Gaza? Noam Chomsky and others challenge world's media

Linguists including Noam Chomsky condemn "reprehensible" Gaza coverage

(2つのリンク先の内容は同じもの)

参照:PCHRの記事 New Israeli Escalation against the Gaza Strip, 7 Palestinians, Including 3 Children, Killed and 52 Others, Including 6 Women and 12 Children, Wounded


編集部による解説:この記事は14日(現地時間)に、ガザでハマスの軍事部門最高責任者が暗殺され、イスラエルが言う「雲の柱」作戦が開始される前に書かれたもので、すでに現在起っていることを予見している。

この14日には、暗殺の後、ガザ一帯にイスラエル軍による空爆が行われ、保健省の発表によると、11人が殺害されている。この日のことは 「ガザへの攻撃激化 緊急」 でも書いている。そこにあるように、イスラエルの大臣は「ガザをreformする」と語り、大規模な虐殺がまた行われるような可能性を示唆した。

また、このチョムスキーらの文章とだぶるが、 「始まりはいつも同じ 「雲の柱」作戦」 でも、14日に先行するガザへの攻撃、一時的「停戦」などをまとめている。

16日の状況については、日本時間17日午前7時現在までずっと情報を追っているが、「かなりひどい」状態としか言いようがない。

ガザから数分ごとに発信されてくる情報は、「この10分間に5回の空爆」「建物全体が揺れている」「〜〜で大きな爆撃」「隣のビルが爆撃された」「〜〜で○人死亡、○人負傷」という感じで延々と続き、カオスと化している。

その中ではっきりしたことをまとめると、16日午後の保健省発表によると、14日からの死者は24人以上、うち8人が子どもで4人が女性、3人が高齢者。負傷者は280人以上。

この発表の後も死傷者の情報は入ってきているので、現在の数は増加していると思われる。

この発表より早い段階で、450箇所への空爆があったとされている。内務省のビルも爆撃されたとの報告が。

ガザからのロケット弾発射も14日以降、いちだんと激しくなり、16日には2012年で初めてイスラエル人3人を殺害した。また、飛距離が伸びていることも確認され、テルアビブまで10数キロの地点やエルサレム近郊に着弾(負傷者なし)したとイスラエル当局は発表している。これまでと同じように、大規模な攻撃を受けると、反撃もまた大きくなる。

ガザでロケット弾がイスラエルの戦闘機を墜落させたという情報もあり、少なくとも1人のイスラエル兵が捕虜になっているとイスラエル筋も認めている。

イスラエル軍は空爆のほかにも、海からガザの海岸部を攻撃し、またガザ周辺に大量の軍用車両が待機している。

ガザでは(いつも起こることによるのか、イスラエル軍によるインフラ破壊なのか)停電が起きていて、ネット接続ができなくなっている人からのツイート発信(携帯からか?)もある。

最も危惧するのは、医療関係での停電、医薬品の不足だ。ガザの基幹病院であるシーファ病院では、発電機のためのガソリンがもう底を尽きていて、あと1日か2日しかもたないという。医薬品も決定的に不足している。医師が停電のため、自分の携帯電話のライトを使い、負傷した子どものバイタルチェックをしている写真が上がってきている。( In photos: Israel attacks Gaza *負傷者の写真あり)

2008~9年の「キャスト・レッド作戦」(ガザ大侵攻)と同じように、イスラエルの総選挙前、米国の大統領選後に、このような虐殺が続いていることは注目に値する。

イスラエルの運輸大臣、リクード党のイスラエル・カッツは「すべての責任はハマスにある。ハマスを取り除く」と11日に発言した。その上、ガザから電気、水、食料、ガソリンを取り除くべきだとしている。これが脅しならいいのだが、本当に実行されると、今までにない悲劇が起こることも考えられる。(もう限界なので、ここは大雑把に書いてます)。

最後に、今、見てしまった嫌な情報。イスラエルの内閣はこの攻撃に関して、予備役兵を7万5000人まで召集できるよう決定したとのこと…。


西岸の各地、また世界中ですでに、このイスラエルの攻撃に対して、抗議行動がとられている。(西岸各地の抗議では逮捕者もかなり出ている。なぜ?)フランスでは23都市で、イギリスでも10都市くらい。エジプトやトルコでも何千人もが抗議をしている。こちらにわかっている抗議行動リスト:「【Emergency Global Actions for Gaza】https://docs.google.com/document/d/1Iq4XZx9Vj0BDIiWzlHi2mUS0VUOn_t-prgtGGCzatQw/mobilebasic?pli=1」

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