2006.09.11

9月11日に思うこと [追加] 

昨晩、NHK-BSでやっていた特集番組はメチャメチャなものだった。米国で2001年9月11日に起きたこととそれ以降のイラク侵略までを自分たちの過去の番組をつなぎ合わせて振り返ったものなのだが、(イラク戦争に反対する人々が登場したところで)米国が言う「セプテンバー・イレブン」が何もかもの始まりだったように語られてしまうところに、どうしようもない欠陥があった。

本当はあの日に起きたことと、それ以降「引き起こされた」ことの断層を見ていかなければならなかったはずだ。

あの事件のわりと直後に発表された文章で、最も心を打ったもののひとつは、チリの劇作家、アリエル・ドーフマン(ドルフマン)氏が朝日新聞に書いた「もう一つの9.11」(タイトルは不確か、2001年11月28日付)だった。

チリのアジェンデ政権が軍事クーデタによって倒されたのが73年9月11日で、この日からチリはピノチェト軍事政権のもとで、アジェンデを支持してきた活動家らが行方不明になり、拷問を受け、虐殺されている。その数は3000人とも言われる。チリの暗い時代の始まりだった。

2001年9月11日も悲劇には違いない。が、それが世界の唯一の悲劇ではない。チリに関していえば、軍事クーデタには米国CIAが背後にあったことはすでに常識となっている。

その関与の仕方を克明に描いた文章が少し前に訳されて、ネット上にあがっている。

「チリ 一九六四年〜一九七三年 鎚と鎌が子供の額に焼き印される 」 (ウィリアム・ブルム、益岡賢訳 「益岡賢のページ」より)

米国が「反共」を旗印に、自分たちの覇権が消え失せるのを阻むためにどういうことを行っていたのかが、これでもか、これでもかと綴られている。

今はこの「反共」という旗印が「反テロ」というスローガンに替わっているだけ。2001年9月11日に亡くなった人々は、そのスローガンのだしにされてしまったことで、二重に不幸だったと思う。(そのことに早くから気づいて、アフガニスタンやイラクに出かけていった「Peaceful tommorows」という遺族たちの会はあったが、その人々の声は無視されてきた)

米国がアフガニスタンやイラクを泥沼化している間に、ラテンアメリカでは親米富裕層がほとんどの富を握り、国をコントロールするというスタイルから脱却し、新しい社会主義の道を採りだした国も増えた。筆頭はチャベス大統領が率いるベネズエラだが、世界で初めてのインディオ出身である大統領エボ・モラレス氏を選出したボリビアも気にし続けていたい(どちらにしろ、いつどのように米国からの介入が図られるか、心配だ。すでにベネズエラはクーデタ失敗などが起きている)。

このモラレス大統領の素敵な言葉を読んだ。

「We Indians are Latin America's moral reserve. We act according to a universal law that consists of three basic principles: do not steal, do not lie and do not be idle. This trilogy will also serve as the basis of our new constitution.」

"Capitalism Has Only Hurt Latin America" より)

じつにシンプルな原則だ。「盗むな、嘘をつくな、怠けるな」。

この言葉について、さらに腑に落ちる解説を読んだ。

「モラレス大統領は、社会の基盤となるのは、「盗むな」「嘘をつくな」「怠けるな」という普遍的な三つの柱だと言う。それを読んで、私はまず、こういった素朴な道徳概念で21世紀の複雑な世の中を制御していけるのだろうかと感じた。しかし、記事を読み終わって、私は、この行動規範が感じさせる非現代性は、実は超時間性とでも呼ばれるべきものであって、それは500年にもわたる白人植民者たちによる圧政を超越する力を持っていると考える。考えてみれば、この三つの柱の裏返しである、嘘をつき、盗み、他者の労苦の上に安楽で閉鎖的な経済制度を打ち立てるというのは、侵略や植民地支配の姿そのものである。」

「エボ・モラレスの社会主義」 「壊れる前に…」より、太字は引用者による)

WTCビルの崩壊から5年が経った今、このようなシンプルな原理で国造りをしていこうとするボリビアなどの新しい動きがより堅固になっていくことを祈る。それは現在世界で行われている侵略、占領を鋭く批判していくものに他ならないから。モラレス大統領は、白人入植者による500年の圧政への「報復」などではなく、平等と多様性を今後の指針として選び出している。これが人類の知恵なのではないかとつくづく感じている。


モラレス氏のインタビュー記事を紹介してくれた「壊れる前に…」さんにTBを送ります。

追加06.9.12

ナブルス通信で翻訳を担ってくれている仲間のリック・タナカさんのブログ「南十字星通信」を読んでみたら、奇しくも最新のエントリ 「平和をおねがい/Da pacem Domine 」 で、同じく「もうひとつの911」について触れていた。(主題はペルトのDa pacem Domine)。

この中のリンクにあったのが、山崎カオル氏の 「もうひとつの9・11」 で、アジェンデ政権が倒されたときの経過を詳しく書いている。この文章では「万を数える人々が虐殺され、それ以上の人々が強制収容所で拷問を受けた」とあり、私が書いた3000人というのはあまりにも控えめな数であったかもしれないと思い始めている。このエントリにはアジェンデ大統領の最後の演説へのリンクも(私はこれを読むたびに泣けてきてしまう)。

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■ コメント&トラックバック (6 件)

夕べ映画「セプテンバーイレブン」を

コメント by :ダルヴィーシュ

久しぶりに見ました。
11人の監督のオムニバスで
DVDでも出ていた筈です。
ワタシは筑紫(残念ながら彼にはまったく
賛同できませんが)がガイド役のTVのビデオを
撮っていました。

今見てもけっこう秀作が多いなと思いましたが
(日本の故今村氏のは酷かった。トリだった
のですが、反戦というテーマはあるとしても
「うめずかずお」の漫画のようだった。あ〜あ)
英国のケン・ローチ監督がこれを
亡命チリ人の話として取り上げていましたね。

それによると犠牲者は3万人です。

キッシンジャーのチェイニーを大きく上回る
悪魔的性格への言及もあり、
米国で「教育」された拷問係りの
とても口に出せないすさまじい拷問の実態も
少し出てきます。

中南米に対しアメリカが100年以上やってきたことの
酷さを再認識しました。
日本でこの方面へのアメリカの非道をまとめていた
サイトもありましたが・・・今すぐ見つからない。

うんざりですね。ホント。

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2006.09.12 (Tue) 08:58

見損ねてます

コメント by :ビー

オムニバスの「セプテンバー・イレブン」、見損ねちゃったんですよ。地元の映画館でこの2日間にアンコール上映をやってましたが、それにも時間が合わず。
ケン・ローチ監督がチリのことを描いているというのは噂に聞いていました。ダルヴィーシュさんのコメントを見て、ますます見たくなりました。DVDを探してみようっと。

ケン・ローチさんと言えば、イスラエル・ボイコットを発表したばかり。
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200608252308.htm
芯の通った人だなぁと思います。

米国がやってきたことは、上述のW.ブルムが『アメリカの国家犯罪白書』(作品社だったかな)で書きつづっていますが、それの続編にあたるものも出版されるという話を聞いてます。知れば知るほど腹が立つんですけどね。

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2006.09.12 (Tue) 20:46

日本盤は

コメント by :ダルヴィーシュ見習い

レギュラー盤がなんとか生きているよーで、4935円
10/27になると廉価版2494円が出るよーです。
マフマルバフの娘さんのヤツ、エジプトの監督のヤツ、クロード・ルルーシュなぞなかなかよいです。
(アモス・ギタイは期待はずれ、と思いました)
一度は観てもと思います。

しかし、アメリカのやって来たこと(自国の利益のために他国に介入して数え切れない人々を虐殺、もしくは虐殺のきっかけをつくる)を考えると、「世界一の犯罪国家」なのは確かですね。たたられても当然でしょ(と、仏教系の国の国民としては思ってしまう)。

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2006.09.13 (Wed) 08:31

すんません、長くなって続きです

コメント by :ダルヴィーシュ見習い

もちろんアメリカのすべてがキライではないので、もそっと年が経ったら、ディープサウスにブルースを求める旅に出て、ついでに人種差別されてこよーか(笑)などと思ってます。

それはともかく今までアメリカには四回行っていますが(残念ながらほとんど都市部)アメリカの内陸には
敬虔に教会に通いつつ、一度も海外どころかヘタをすると州外にも行かないで生涯を終える人が多いので、そんな人にはアメリカ政府のやってきたことを知らない人が多いでしょうね。そんなことを考察すると、民主国家と言いつつ実態はイスラームの独裁国家と変わらんですね。パレスチナで出会った多くのアメリカ人
(ユダヤ系が多い)も、アメリカ人全体にいろいろなことが知られていないことに本当に切歯扼腕している人が多い。なんとかならんもんかなあ。アメリカのフツーの人が目覚めたら、なんとか事態もよくなるよーな。それともレオ・シュトラウス系の「衆愚政治」が当分つづくのか・・・

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2006.09.13 (Wed) 08:32

Americans

コメント by :ビー

私は2度しか行ったことないのですが、米国の人々がかなり好きです(とても素敵な人たちに多く会ったせいだと思う)。

コロラドの安宿で、「ウェルカム トゥ アワ ホーム」と言ってハグして迎えてくれたおじいさん。忘れられないなぁ。

そういう気だての良さとは別に、確かにいろんなこと(特に米国外)に対する無知はひどい……。いまだにWTCビルの崩壊がイラク人のせいだと思っているような人もいたりして、トホホです。米国の人たちが政府のやっていること/やってきたことにもっと敏感になれば世界は変わるところも多いと思うのですが。(特に対イスラエル軍事支援!)

(とヒトのことを言えない部分もありますねぇ。)

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2006.09.13 (Wed) 17:21

百年前の911:南アフリカではじまったガンジーの闘い

コメント by :

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2006.10.31 (Tue) 02:18