2005.09.20
パレスチナ報道2 「そこは普通の街です」
「そこは人々が教育を受け、仕事を持ち、結婚式には踊り、子どもたちを育てている街だ」と自分の街について書かれたら、普通「は?」と脱力する。何も語っていないと思うわなぁ。

「ガザの赤ちゃん、ユーセフ」copyright:Laila El-Haddad[クリックで拡大]
これはBBCのオンラインニュースで流れたガザについての説明。もちろん、この記述には文脈の中で意味があるのだけれど、それにしてもなぁと思った。
記事は自治政府がガザのイメージをよくするために、ガザ中にポスターや横断幕を貼って"Let's Build Our Homeland"などという言葉とともに、普通に生活している人々の写真を出しているという内容だった。
写真は釣り船の上で夕日を浴びて微笑む少年とか、ガザのいわゆる「普通」の生活を撮ったものが採用されているらしい。この一連の写真は外国のジャーナリストや訪問者などにも配られているとか。
自治政府の報道官(顧問)でもあるディアナ・ブットゥは、
「外国に向けてだけではなく、大切なのはガザ人自身に向けて、ガザの違ったイメージを作り出すことが目的です。何十年にも渡る困難と騒動の後、人々にとってここが「いい場所だ」と思うことが難しくなっているのです」と語っている。
自治政府もこういうことを少しは考えるようになったか。確かにガザは東地中海に面している街で、本来は地中海の恵みを受け、オリーブやオレンジが実る豊かな街であり得たところだ。
この写真を提供しているのは、ガザ在住の写真家であるジョージ・アッザル氏。「戦争カメラマン」としてレバノンやイランなどでも活躍してきたという。アッザル氏は、ガザで起きる事件をカバーするほかに、ガザの「別な面」を撮ることにも力を注いできた。
それは最初のインティファーダの後に西洋で写真展を開いたときに、自分の写真には自分が中東を愛している理由が少しも見いだされないことに気づいたことから始まっているとアッザル氏は言う。
「誰も私がそこにいるのをなぜ愛しているかを理解できなかったんです。西洋のテレビや雑誌からはわからないのです。」
というわけで、アッザル氏は報道では流れないものを撮ることを始めた。ガザは特別だと氏は言う。海と砂漠。そして熱狂的で素晴らしい人々。古い遺跡もたくさん残っている。破壊された建物、込み入った居住区というような表面を超えたところにガザの愛すべき姿はみつかるとアッザル氏は語っている。
☆
というのが、BBCの "Working to improve Gaza's image" (6日付、By Alan Johnston)から引いてきた内容を再構成したもの。
その記事では
「ガザのイメージは悪くなりようがほとんどない。ガザは爆弾の、マスクをつけた武装の男たちの、怒り溢れる葬儀の街として見られている」
という出だしに始まって、BBCは「いや、それでもここは他の普通の街と同じなんだ」ということで冒頭に引用した「そこは人々が教育を受け、仕事を持ち、結婚式には踊り、子どもたちを育てている街だ」という記述を持ってきたというわけだ。
実際の原文はこの通り。
"It is a place where people get educated, have careers, dance at weddings, raise their children, and make the best of life by the Mediterranean."
こんなことをわざわざ書かないとならない状況というのは、とてもよくわかる。実際、世界の多くの人によって、ガザというのは「訳の分からない恐ろしげな街」とか「悲惨な場所」としてしかイメージされていないと思う。
「そこは人々が教育を受け、仕事を持ち、結婚式には踊り、子どもたちを育てている街だ」
なんてことを書かなくてはならないほど、ガザのイメージが極端に固定化されていることが問題なのだが、この記事で私が指摘したいのは、そのイメージを助長してきたのは、自分たちマスメディアだという内省がどこにも働いていないように見える点。
自治政府が登場し、写真家が登場して語っているけれど、その反面、ガザのイメージを作り上げてきたメディアのことには一切触れられていない。それは写真家の言葉にちらりと窺えるだけになっている。
人が生きていれば、普通に行われること─勉強もすれば、働くし(仕事があればの話だけど)、結婚したり、しなかったり、ケンカもあれば友愛もあるよ─は、本当はちょっと考えれば誰でもわかることなのにね。そこにはいいヤツもいれば、嫌なヤツもいる。これも当たり前。行かなくてもわかるようなことがパレスチナに関しては、努力して伝えていかなくてはならないことになっている。
*写真は、ガザのジャーナリスト、ライラさんによるもの。ガザにも「リンゴ飴」はあるんだ!としょーもないことを発見。英語でも"Candied apple"って言うんだね。で、あの、お腹に飴が垂れてます、ユーセフくん。裸で良かった〜なのか、最初から裸にして飴を渡したのか、どっちかな。


