2005.09.13

「私は『略奪』をしたのでしょうか」毎日新聞さんへ

学生の頃、よく道ばたに捨てられていたモノを拾った。白黒のカラーテレビとか、タンスとか。テレビは画面と音声が同時に出ない─どちらかだけなら大丈夫─という代物だったけど。その頃、周りのビンボな学生たちはみんな拾って家財を増やしていた。「○○の交差点近くにスティール本棚、あったで」なんて情報が行き交ったりして──。

そういう行為は毎日新聞13日付によると「略奪」ということになるらしい。

ガザ「撤退」完了で毎日が出した記事は「解放に歓喜、一方で略奪も」という見出しになっている。パレスチナ人たちが、元入植地に入って「略奪」をしているというのだ。その箇所を見てみよう。

「イスラエルが破壊せずに残した巨大なシナゴーグ(ユダヤ教礼拝堂)では、近くの住民だけでなく治安部隊の隊員までもが、銅線やアルミサッシなど換金できるものを手当たり次第に略奪し合った。

ハンマーで窓ガラスをたたき割り、金目のものを探し回る人々の姿に、近くの町ハンユニスからやってきた大学生イブラヒムさん(21)は「失望した」と顔を背けた。」(毎日新聞、13日付より)

確かに上品な行為ではないけれど、捨て置いていったものを採ることが「略奪」なんだろうか?それも銅線とかアルミサッシとかだよ。ガザに住む人は「回収」と書いていたけれど、本当に廃品回収と言っていいレベルのものだ。

ガザの人たちが70%とも言われる失業率のなかで暮らしていること。それは占領下で、人もモノも自由に移動できない状況で作り出されたものであることを考えれば、捨てていった銅線などを手に入れようとする姿は、普通に理解できる。

報道されなかったが、これより大規模な「略奪」的行為をイスラエル人自身も入植地でしていることを かつてここに 書いた。

入植者の退去が完了した後に荷物をまとめに戻ってきたイスラエル人たちのなかには「略奪」行為をしている人たちがいたという話だ。これも「略奪」と言っていいものなのか、私には疑問だが、イスラエル人(どういうスタンスの人なのかはわからない)がそのことをとりあげている記事から再度見てみると、ファックスを「撤退」担当局に送って許可を得れば、入植地に入れて、そこで大がかりに民家や地域施設からモノを奪っている人たちがいたと書いてある。

持っていったものは、エアコンやコンピュータ(50台!)、農機具など。それもトラックで来て、運び出しているという有様で、イスラエル兵士の中にもそのようなことをしている人がいるということも書かれていた。

"Fax to Disengagement Authority Enough to Enable Looting" による)

このようなことは報道されなくて、パレスチナ人がそれらが持ち出された後の、残りカスの中から銅線なんかを取っている姿だけが「略奪」と書かれる。

「AP通信発8月30日米国東部時間11時31分の記事では、食料品店から必要品を持ち出して水の中を避難する黒人男性について「食料品店を略奪した(looting)あと」という言葉が使われているが、AFP発米国東部時間3時47分の記事では、ほぼまったく同じ状況の白人の写真に「地元の食料品店でパンとソーダを見つけた(finding)あと」と説明が付けられている。

AP通信とAFP通信の違いはあるが、同じ行為を貧富や肌の色の線で差別して別の言葉を割り当て、一方を犯罪化していく言説のメカニズムがここに伺える。」( 「ニューオリンズ」 (「益岡賢のページ」より、太字強調は引用者による)

これはニューオリンズの被災後の状況について書かれた文章だが、毎日の報道とぴったり重なり合うと思った。


次に書く記事もこの続きです。今度はパレスチナ人が記録する入植地解放を噛みしめるガザ人の様子。上のような日本のメディアでは報じられない姿があります。

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