2005.07.30
優勝よりもパレスチナ人としての尊厳を選んだ女性
イスラエルに住むパレスチナ人(「イスラエル・アラブ」とも言われる)が、イスラエルTVのコンテスト番組で、優勝を棒に振って、自分のパレスチナ人としてのアイデンティティーと尊厳を貫いたという話を読んだ。
TV番組はイスラエルのチャンネル2で放映した「リーダーを探して」というショーで、ドナルド・トランプの「アシスタント」の形式で行われているコンテスト番組だという(って、言っても全然わかんないけど…)。そのファイナリスト4人のなかにナザレ出身のパレスチナ女性、アビール・キビティさんがいた。
アビールさんは優勝の前評判が高く、賞金100万ドル[何かの間違いじゃ?…100万シェケルかなぁ]の獲得を期待されていたのだが、イスラエル国歌が流れたときに起立をするのを拒否した。
「もし、優勝を逃したとしても、私はシオニストの人種差別の象徴に敬意を払う気はないのです」
と彼女は語った。そして、審査員のひとりが、「死んだイスラエル兵士の魂のために敬意を払って起立しますか」と訊いたことにも、確たる調子で
と答えた。この返答で審査員たちは彼女を失格にしたという。「私は彼らのためにそんなことをけっしてしないでしょう。これは私の原則であり、信念であり、お金には換えられないのです」
アビールさんが言うには、この番組は政治的リーダーではなく、社会的リーダーとなる人を捜し出すことを目的にしていると説明されたのに、彼女だけが政治的立場を質問された。
番組後のインタビューでアビールさんは
「最初から私は負けることを望んでいました。というのは、私の勝利をイスラエルがアラブ人に対して民主的であるとか、非ユダヤ人でもこの国は同等に扱っているという政治的アピールの道具にするのがイヤだったからです。そんなことは現実ではないので」
「私は賞金のために自分の信念を変えなかったことを誇りに思っています。賞はどうでもよかったのです。これらのことは私がアラブ人としてできることであり、送りたいメッセージでした」
と語っている。うん、このインタビューの言葉がいいなぁ。もしかして、賞金は本当に100万ドル(1億円)だったかもしれないと思い始めた。シェケルにしても、3000万円近いお金なので、相当な額だ。→追加:賞金は100万ドルだったことがわかりました。すっごい…。
(これは "Abeer Qibti: Birth of a new Palestinian leader" (Sabbah’s Blog)の記事をざっと紹介したものです)
上とは関係ないけれど、「パレスチナ女性つながり」ということで、ガザのジャーナリスト、ライラさんのことを。
ライラ・エル・ハダッドさんは、アルジャジーラなどに精力的に記事を書いている(私が知る限り唯一の)ガザ在住女性ジャーナリストだ。つい最近、ワシントンポスト(!)にも寄稿していた。なぜ「!」が付くかというと、ワシントンポストのようなイスラエル政府寄りのメディアがパレスチナ人の文章を載せるというのがめったにないことだから。
ライラさんが「占領を再構築する(Restructuring Occupation)」というタイトルで「撤退」がけっして占領の終結ではないことをガザ人の立場から書いた記事から、ちょっとだけ紹介。
「私は先月、ガザの出入り口であるエレズ検問所で、西岸で行われる歓迎会に出席するため、イスラエルから[西岸入りの]許可をもらおうと8時間待っていた。しかし、「セキュリティー上の理由」という疑わしい名目だけで拒否された。
私はパレスチナ人で、16ヶ月になる一時もじっとしていることのない男の子の母親で、ジャーナリストで、ハーバードの卒業生だ。私のどこが人を脅かすのか私にはわからない。息子は──賛成しそうもないが──もし、彼にできるなら私の膝に座り続けているだろう。
「パレスチナ人であるというだけで十分なのだ」とイスラエル軍の報道官は私に言った。
「ガザのパレスチナ人であるということだけで、まず第一に「安全上の脅威」になり、第二にジャーナリストだというのがまずい」
( "Restructuring Occupation" By Laila El-Haddad より。英語全文はここで読める)
ライラさんが英語に堪能だというのは知っていたが、ハーバードの卒業生だとは…。そりゃ、できるわね。いきなりこんなことが書いてあって、普通なら嫌味のようだが、ワシントンポストで読んでもらうには、このような「肩書き」がパレスチナ人には必要なんだろう。ライラさん、27歳だそうだ。
ライラさん自身が綴るブログ "Raising Yousuf: a diary of a mother under occupation" (ユースフを育てながら:占領下での母親の日記)には、愛息ユースフくんの写真の他、ガザの写真もたくさん。



