2005.06.10

[映像記録]土井敏邦氏「ファルージャ2004年4月」を見て

昨年4月、パレスチナ人の友人から突然1通のメールが届いた。ファルージャの中にいた人が体験したことを書いたもので、読んでいて震えが起こった。「これはすぐに多くの人に知らせたい」と思い、 このブログ にそのままあげたところ、益岡賢さんが数時間後に翻訳をしてくださった。

「ファルージャの目撃者より:どうか、読んで下さい」 (ジョー・ワイルディング、2004年4月11日)

「目は、建物の角にいる米軍海兵隊の軍服を着た男たちの影に向けていた。何発かが発砲された。私たちは、できるだけ低く身を伏せた。小さな赤い光が窓と私の頭をすり抜けていくのが見えた。救急車に当たった銃弾もあった。私は歌い出した。誰かが自分に向かって発砲しているとき、他に何ができるだろう? 大きな音を立ててタイヤが破裂し、車がガクンと揺れた。

心底、頭に来ていた。私たちは、何の医療処置もなく、電気もないところで子供を産もうとしている女性のところに行こうとしていたのだ。封鎖された街の中で、はっきり救急車であることを表示しながら。海兵隊は、それに向かって発砲しているのだ。一体、何のために? 」(上記より)

チラシの画像(男性が叫んでいる)
チラシの画像( "Falluja,April…" より)

ジャーナリストの土井敏邦さんが発表された映像記録「ファルージャ2004年4月」は、このファルージャで起こったことをまとめたものだ。バグダード陥落の4ヶ月後である2003年8月のファルージャから始まり、この4月の包囲と虐殺直後の様子を通して、イラクで起きていることの本当の意味を伝えている。

映像の大半は、生き残った人々による証言だ。避難しようとして乗っていた車を狙撃されて2人の子どもを失った母親は言う。

「私は子供を失った多くのファルージャの女性の一人にすぎない」

音楽もなく、ナレーションもない中、映像は家族を失い、また傷ついた人々が瓦礫となった場所で状況を語る様子を淡々と映し出す。

ふだん、ニュース番組のなかで数秒の発言に編集されているものばかりを見ている頭には、ほんの少しの沈黙、言い淀み、繰り返しが表しているものがどれだけ大きいか、気づくことになる。

証言をしている人たちのほとんどは、目の前で起きたとてつもない惨劇をきわめて冷静に語る。感情を押し殺しているというよりも、起こったことに人間の感情がついていなかいというようにも思える。

家族13人を失ったファルージャ近郊の農家の父親は男の子がバラバラになり、飛び散っていた様子を語った後でこう語る。

「長女の頭もここから先がなくなっていた(後頭部を示す仕草)。最後に米軍が来て言った。I'm sorryと」

(ほんの少しの沈黙)

「『すみません』は何の役にも立たない。死んだ者は戻ってはこないのだから」

この間、この人は泣きもわめきもせずに状況を説明し続ける。感情は推し量ることができない。病院の医師たちも同じように淡々と犠牲者の様子を語る。

脳に無数の爆弾の破片を受けて、目を動かすこと以外できなくなった少年は、このファルージャの人々の象徴のようだ。「医者は手の施しようがないと言っている」という会話がベッドに横たわる少年の前で交わされている。母親は一瞬唇を噛みしめながら、「この子は15歳。……死んでいるようだ」と語る。これらの会話が少年には聞こえているのだろうか。聞こえていたとしても、彼には自分の気持ちを表す何の手段も残されていない。

映像は最後に集団墓地となったサッカー場に辿り着く。人を埋めた土盛りが続く。ここの写真は多くのメディアに載ったはずだ。本当は私たちは知っていたはずなのだ。

だが、急ごしらえの墓名碑に書かれているひとつ、ひとつの悲劇──発されることがない悲しみ──を感じていたのだろうか。多くのファルージャ市民が訪れ、土盛りに水をかけているこの場所で、最後に私たちは泣いている男性に出会う(写真に写っている髭の男性)。二人の息子を亡くしたというこの男性はほとんど言葉にならない叫びをあげていた。

この4月のファルージャで殺された人は700名以上。そして、11月にもファルージャは再び大侵攻を受けた。このときの様子はいまだ大手メディアではほとんど報じられていない。2000名以上が殺されたことは確かなのに。

制作された土井さんは「これは作品ではなくて、記録だ」とおっしゃったそうだ。だけれど、私はこれが記録であり、作品でありえた稀有なものだと思う。言葉と沈黙と街のざわめき──多くの場所で鳥が啼いているのが聞こえる──が、ファルージャで起きたことの悲劇と釣り合うように語りかけてくるから。そして11月の惨劇もここには収められていないにも関わらず、伝えているから。

55分。VHS、DVDで入手可能。日本語、英語字幕あり。


メディアを騒がせるものが大した出来事で、とりあげられないものはそうでもないというような錯覚が蔓延していることを改めて感じる。

私は文字で伝えられたファルージャの記録 『ファルージャ 2004年4月』 (現代企画室刊、益岡賢、いけだよしこ編訳)をしつこく読んできたつもりだったが、今回同名の土井さんの映像記録を見て、今まで感じていたことがまだ甘かったという思いになっている。(この本と映像記録は非常によく補完し合っている)

「ブッシュやラムズフェルドやブレアは戦争犯罪人として後生に名を残すだろう」という思いが、少しでも早く裁かれなければいけないと思うようになった。それだけのことが起こっているのを、今までになくはっきりと実感した。

英語字幕もあるので、世界の人に見てもらいたい。

この映像記録の入手方法などについては、 パレスチナ情報センターのこの文章 が一番まとまっている。

また、ファルージャへ入っていたジョー・ワイルディングさんのイラクでの活動も映像になって見られるようになった(英語のみ): "A letter To The Prime Minister: Jo Wilding’s Diary From Iraq"

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■ コメント&トラックバック (3 件)

土井敏邦さんのドキュメンタリー,『ファルージャ2004年4月』

コメント by :nofrills

2005年5月19日,いけだ(ハンドルはnofrills)投稿記事。18日に東京で行なわれた土井さんのドキュメンタリーの試写会の直後に書いたものです。

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2005.06.12 (Sun) 01:33

土井敏邦 『ファルージャ2004年4月』

コメント by :nofrills

2005年5月21日,益岡賢さん投稿記事。18日に東京で行なわれた土井さんのドキュメンタリーの試写会の後に書かれたものです。

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2005.06.12 (Sun) 01:35

土井敏邦さんのドキュメンタリー『ファルージャ2004年4月』について

コメント by :

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2006.04.02 (Sun) 20:37