2005.04.12

NHK-BS1 「ユダヤ過激派」

この番組はイスラエルの中でも相当(いや一番?)過激な右翼「カハネ主義者」たちを取材しているもので、この人たちの言動が映像で届けられる分、そこそこ知っていてもかなりショッキングだった。

「イスラエルの地にイスラム教のモスクやキリスト教の教会があってはなりません」

「私たちに救いをもたらすのは祈りではなく、戦いなのです。しかし、我が国には『和平を望む』などという連中が大勢います。戦争はイヤだ、死ぬのはイヤだと言うのです。それでは話になりません。徹底的に戦って相手をたたきのめすのです。復讐を果たすのです」(カハネ主義者、B・ベン・ヨセフの演説より)

と冒頭近くから、すごい言葉が続く。この番組は4/17(日)13:10-14:00に再放送されるらしい(たぶんBS-1)。

カハネ主義者とは殺された極右政治家カハネを支持する人々で、このカハネはあまりにも人種差別的な言動がひどいために国会を追われ、自身のカハ党も非合法化されてしまった。この人々はイスラエルから全アラブ人(パレスチナ人)を追い出すことが必要であると考え、和平推進派を非難している。

番組によると、「イスラエル国内の4人に一人がカハネを支持している」ということで(これはちょっとオーバーじゃないのかなぁ)、そら恐ろしくなってくる。

パレスチナ人のトラックがこのような思想を持つ入植者に襲撃され、育てていたオリーブが無惨にへし折られている映像のあとにはこんな言葉が入る。

「ユダヤ人の掟では異民族が一緒に暮らすことが許される場合もありますが、アラブ人はべつです。もし、立ち退く気がないのなら、その代償を払ってもらわなくてはなりません。ここはイスラエルの土地です。ここに住むことが許されるのはユダヤ人だけです」(カハネ主義者、S・ベン・イシャイ)

カリスマ的リーダーだった入植者がパレスチナ人に殺害された後では、慕っていた人々が「復讐を!」と叫ぶ。

「復讐は美徳なんです。ユダヤ教の教えでは偉大なこととして讃えられています」(カハネ主義者、ノアム・フェダーマン)

「我々の考え方は欧米の国々の文化や考え方とはまったく違うんです。本来のイスラエルは今ある国境よりもずっと広いはずです。それはヨルダンやレバノン、シナイ半島の一部にまで渡ります。すべてのユダヤ人が帰ってきて、そこに我々はユダヤの王国を築くのです」(テロ計画を立てたシュロミ・ドビア)

この人たちを見て、ユダヤ教を判断しては間違いそうだ。聖典、トーラー、旧約聖書と言っても多様な面を含んでいるはず。その中からある部分だけを取りだして絶対化しているような印象を受けた。

カハネ主義者の若者たちはパレスチナ人を殺し、さらに東エルサレム・パレスチナ人居住区にある小学校前で大規模な爆弾テロを計画していた(未遂に終わる)ことで服役している。その話も臆面もなくカメラに向かって語る。

「(ユダヤ人の仲間が殺されていくのを見て)すべきことはあるんじゃないかと思ったのです。ロケット弾や爆弾が家にあるんです」

──爆弾を持っていたんですか?

「軍隊が持っていますから、手に入れるのは簡単ですよ」

──盗んだの?

「ええ」(ヤーデン・モラグ)

(中略)

「犠牲になるのはパレスチナ人なら誰でもよかった」

──イスラム過激派がやるように?

「その通り」(ドビア)

この青年たちは単なるいたずらでも告白するようにこんなことを語る。これらの青年たちが暮らしている入植地の話は印象深いものだった。エルサレム近郊で、入植地の周りには他の入植地にあるような壁もバリケードもないのだという。そして、威嚇射撃によって「よそ者を近づけさせない」ようにしているとか。

「我々が囲いを作れば、パレスチナ人たちはその外側の土地を自分たちの土地だと考えるはずです。そして、囲いの周辺を耕してしまうんです。そんなことは許せません。だから、あえて境界線は引かないんです。ライフルの弾が届く範囲ならそこは我々の土地です」(モラグの父)

えっと、ここは入植地。つまり、パレスチナ人の土地をイスラエル人が不法に占拠している場所なのだが、彼らの認識ではまるで正反対なのだということがわかる。

「相手にやられたら必ずやり返します。ただじゃすみませんよ。彼らがヤギを1頭盗んだら、我々は相手のヤギの群れを盗みます。銃で1発でも撃ち込まれたら、我々は相手の村を襲撃して何発でも撃ち込みます。単純なことですよ。片目がやられたら、相手の両目を奪う。目には目を、歯には歯を、です」(モラグ)

冒頭にもあったように、この人たちにとっては「武力がすべて」。自分たちの平和は武力によってもたらされるという考えがオブラートに包まれることなく、語られる。

このような極右を取り締まり、右派から嫌悪される国内諜報機関(シンベト=シャバク)の活動も出てくる。この番組のなかでは「ユダヤ人テロ組織と闘う」姿がかなりクローズアップされているのだが、現実には入植者たちの暴力は放置されていることが多いので、なんとも言えない。たとえば、治安機関長官アビ・デヒテルのこんな演説。

「パレスチナ人の蜂起が起きてここ2年の間に、7人のパレスチナ人が殺され、19人が負傷しました。パレスチナ人だったゆえに狙われたという例は数知れません。ユダヤ人のテロリストは相手を選びません。幼い子どもや病人も標的となります…」

うーん。それはイスラエル軍も同じように(もっと大規模に、そして罪に問われることなく)やっているでしょう?確かにこの人たちは危険だが、実際にやっていることは変わらない。

この人々が大変極端だということはわかるが、じつはここに並べてきた発言にシオニズムの核となる考え方が結晶している。この番組はそのことを明確にしてくれた。48年の建国当時に武器を取っていた若者たちもきっと変わらないだろう。「ユダヤ人だけのための国家」=他の人々の追放、武力による領土の確保。シオニズムを貫くことと民主主義は両立しないわ。

シオニズムが内包するものの怖さをひしひしと感じた。

「いつか政府もアラブ人の村に乗り込んで、彼らを追い出し、殺すのもいとわないユダヤ人を必要とする日が来ると思います。アラブ人を攻撃して、追い出すためにね。イスラエルには武器の扱い方を知っている民間人は大勢います。実行に移すのはごく普通の一般のイスラエル人かもしれません…」(カハネ主義者・マイク・グゾフスキー)

やけに自信満々に語っていたなぁ。

2005年、イスラエル、SETプロダクション制作。

原題:"The Next War:Radical Zionists in the Holy Land"

追加:この人たちと対称的な位置にあるイスラーム主義者の一部も非常に似た傾向を持っていると思う。武力信仰や他者の排斥など。だから、問題はユダヤ教でもイスラームでもない。軍事力だけで人の国に乗り込み、好き放題している国(自称敬虔なクリスチャンがドン)もあるわけだし。

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■ コメント&トラックバック (3 件)

目には目を

コメント by :ばるさん

「目には目を、歯には歯を」は聖書の出エジプト記21章にも書かれている。けど、
昔マンガから得た知識では、目には目だけであって、目も歯もはダメという制限も含まれるんだと知ったけど・・・
ユダヤやイスラムではどうなんでしょう?
やはり過激な人たちは聖典なりの一部を都合よく解釈しているのかな。

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2005.04.12 (Tue) 22:50

いろいろな解釈

コメント by :ビー

「ばるさん」さん、私はユダヤ教もイスラームもキリスト教もわかっていないんですが、そもそも私が読んだユダヤ教のそれなりの権威の人(オックスフォードの研究者で、ラビである人)が書いた本には、「『旧約聖書の宗教』をユダヤ教の範囲から除外し」、タルムードにのっとって考えるのがユダヤ教であると書かれています。だから、上記の人々がやたら旧約を持ち出すのには「?」でした。(しかし、「目には目を」は「目も歯もはだめ」ということだと私も思います。「100倍返し」をするのは論外なんでは?)

ユダヤ教でも改革派、正統派、そのうえ人工的に作られたイスラエル国家を認めない超正統派もいるわけですから、様々なんですよね。「過激な人たち」だけじゃなくて、みなそれぞれに解釈しているのだと思います。それが悪いわけじゃないけれど、そこを根拠に人を苦しめることを正当化するのが問題なんだと思います。

米国のキリスト教福音派などは、イラク攻撃を支持し、イスラエルの政策を支持している(自分たちなりの聖書解釈によって)いるわけですが、キリストの説いた隣人愛などはどこへ行ってしまっているんでしょうね?

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2005.04.15 (Fri) 23:22

とりとめの無い文章になってごめんなさい

コメント by :ばるさん

返信ありがとうございます。
宗教についてちゃんと学習しているわけではないのですが、いろんな宗教がそれぞれ良い事も言っているんではないかと思うのです。けれど、その宗教の信者が自分で経典を読んで自分の頭で理解している事って少なそうに思います。
宗教指導者に対して不信を抱いています。
「布教に熱心でなくてもいい」って寛容な心の宗教では広がらない。今信者の多い宗教ってどこか寛容でない部分があるんだろうな。

けれど、ある宗教の考え方を(自分の方が正しいと思い込んで)否定する事には慎重でありたいと思います。
つい、マスコミとかの風評のまま受け入れてしまいがち。イスラムの事も、情報で先入観を持っている。(知ることは大切ですが。)

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2005.04.15 (Fri) 23:48