2004.11.18
「海はひとの母である」沖縄・20年前の語りから
「ひもじければ港にいけばよかった。手ぶらで海にいくでしょ。そして踵で砂をグリグリやると、車エビがでてくる。車エビが眼ン玉ひからせて、群をなして砂のなかから湧いてくるんだな。あんまり沢山でてくるんで、恐ろしくなって逃げてきたこともあるぐらいです。それをそのまま生まで食べてしまう。」
「潮が満つと、今度は水泳をする。水のなかで眼を開いていると、砂地で活動を開始したカニが見えますから、追っていって足で押える。もぐってそれをつかまえる。家にもちかえることもあるが、大体はそこで食べちゃったな。本当に、新鮮なものばかり食べてきた。それほどゆたかな干潟だったわけですが、それがみなCTS[註・石油備蓄基地]によって失われてしまった。」(安里清信〔語り〕『海はひとの母である』晶文社 81年)
都会で生まれ育った私には、こんな豊かな海があった/あることすら驚異だった。私が初めて沖縄と出会ったのも、安里さんのこの本の中だったと思う。石牟礼道子さんの『苦海浄土』とともに、長い時間をかけて私の身体のなかに浸み通っていた本だ。このところ、何度も思い出していた。久しぶりに探してみると、するっと本の山の中から目の前に現れた。
安里清信(あさとせいしん)さんは1913年沖縄に生まれ、朝鮮半島で徴兵され、戦後沖縄に戻る。教師生活を経て、晩年は金武湾の石油備蓄基地(CTS)に反対する運動をしていた。『海はひとの母である』はその安里さんから70年代末と80年に聞き取ったことをまとめた本だが、CTS反対運動についての本ではなく、安里さんというひとりの人間から溢れ出す沖縄の本だと言ったほうがよい。
いったい何のきっかけがあって、20歳そこそこの私がこの本を手にしたのかは憶えていないが、自然のなかで育まれ、そこで生きてきた人の言葉に衝撃を受けたことだけは憶えている。
「ここの自然というのは、裾礁や干潟が多いだけに、海になったり陸になったりする微妙な自然でしょう。珊瑚が沖縄の国をつくってきた。浜比嘉島の西にミルチビシというところがある。珊瑚礁は虫によって隆起していきますから、あそこも将来はひとつの島になる可能性があります。そのようにして成長していく海だということがわかります。珊瑚をだいじにすると、島がふえるんです」
「いったん石油基地のために油で汚れたら、永久に珊瑚は生えん。モズクも殺される。それなのに沖縄の為政者のなかには、自立のための積極的な研究というのではなくて、たえずヤマト(日本)に依存しようとする虫のいい考え方がはびこっている。ヤマトからなにかをもらってきた者が選挙にでるというあり方。…(中略)…このままでは沖縄は東京都みたいなとんでもないところになってしまいかねん。そうした政治行政の発想ではなく、これからの沖縄が生きる道は底辺から、自分たちのもっているよさを発見して、つきあげていくところにしかないと思います。サバニ(くり船)でやっていると貧相にみえる。巨大なタンカーをもってくるというと大金持だという錯覚にとらわれ、自分たちの母なる海を知らずに殺してしまった。他に依存して生きようとする根性そのものがすでになっとらん。」(同書より)
自分の身体の一部でもあった海、海と共にある暮らし、文化が壊されていくことを目の当たりにして、安里さんが語った言葉は、今なおさら読まれるべきものだと読み返して感じる。
「たえず米国に依存しようとする虫のいい考え方がはびこっている。米国からなにかをもらってきた者が選挙にでるというあり方。」
沖縄(ウチナー)とヤマトの関係は、そのまま米国と日本の関係を映している。それで「利益」を得る人がほんのわずかな人に過ぎないということも。
「革命とか変革ということばも私は好きじゃないんだ。われわれの運動の課題は、底辺の人間たちがいかに現実のなかに充実した生活を構造化しうるかということなのであって、みずからの生活基盤をがっちりさせておけば、おのずから国策を批判して生きるつよさもできてくるはずです」(同書より)
こう語った安里さんも、本のなかに出てくる魅力に溢れたおじぃ、おばぁももう還らぬ人となっている。沖縄も20年でおそろしく変わってきただろう。だけど、 辺野古 で闘っている人のなかに、まだ沖縄を身体で生きてきた人たちがいるのを私は感じている。
安里さんから私への強烈なパンチとなっている文をあと二つほど。
「東京でも那覇でも、右を向くにも左を向くにもお金がかかる。都市文明というのはお金の奴隷だよ」
「金さえもらえばいいというのは、金をもらってたくさん死ねというのと同じなんだ。命はそんなに売ったり買ったりできるようなものではないですよ」(同書より)
■ コメント&トラックバック (3 件)
沖縄!!
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物心ついて初めての沖縄。
よかったー。海と空と沖縄と。
都会のせわしさから離れて、リフレッシュ!
でもね、同時に世界のいろんなものの縮図を見た気がした。
自然と開発。
自然を残したいけど、
お金を得るためには、資本主義社会で生きていくためには、開発しなくてはいけない。
平和と安全保障。
米軍基地があっちこっちにあって、米軍と隣接する生活。
ちょっとだけ、イスラエルーパレスチナの構造に似たものを感じた。
普通に、「これ、米軍基地」と説明する人々。
米軍に土地を取られて入ってくる「軍用地費」。
まったく日本人が入れない、閉鎖された米軍基地。
本島行きのエ...
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2005.05.25 (Wed) 00:38




海はひとの母である
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2004.11.22 (Mon) 23:22