2004.10.26
(長文)「パレスチナ人の血で贖う《撤退》」 by グッシュ・シャローム
パレスチナ自治政府のプレスリリースによると、ハンユニスへの攻撃によって18人が殺害され、91人以上が銃弾を受けるなどして負傷とのこと。負傷した中には、学校へ向かう途中だった学童14人が含まれている、とも。また、殺された18人の中には自治警察の人間が4人含まれているということだ。
ラファでも2人が銃撃を受けて負傷という知らせが入っている。他に「こんなことをなぜする?!」ということとして、イスラエル軍兵士がハンユニスのレジスタンス・メンバーの墓を掘り返したというニュースが届いた。ハマスのカッサム旅団メンバーだった2人の墓を含む60以上もの墓がブルドーザーで破壊されたということだ。
この2日間で破壊された家屋はハンユニスで23軒。農地の破壊も起きている。
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このような事態について、イスラエルの反戦団体「グッシュ・シャローム」は「(一方的撤退案を認めさせるために)パレスチナ人の血でもって、イスラエルの右派へアピールする明白な政治的行為」だと批判している。
イスラエル国会でシャロンの撤退案はぎりぎり通過しそうだということで、世界のメディアもこれをかなり大きく取り上げている。エルサレムからの情報によると、今日(26日)は撤退に反対している入植者ら右派の大集会が予定されているということで、その中には入植地に住む子どもたちが議会を取り囲み、人間の鎖を作るというのもあるらしい。
まるでシャロンがまともな人であるかのような印象を受けかねない昨今の入植地《撤退》問題なのだが、勘違いの社説などが溢れる前にきちんと書いておかないとならないことをまとめてみよう。
まず、ガザの入植地が撤退することで、実際にガザがどうなるか。考えられる範囲では…
《パレスチナ人にとっての唯一の利点》
- 入植地に取られていた土地が返ってくる。交通の遮断がなくなり、内部での移動は楽にできるようになる。
《変わらない点》
- 囲われた牢獄のようなガザから自由に外部と行き来することはできない。
- その結果、経済も今までと同じくイスラエルに従属してしかやっていけない。
- 軍事侵攻はいつでも容易に行われる。目の前に部隊が駐留していなくても、すぐに入れる。国境地帯のラファではまったく変わりなし。
では、イスラエルとしては何を手にするのか。
今まで政府から手厚い庇護を受けてきた入植者、そして偏った宗教的信念を持っている右派にとっては、「一大事」なのだろうが、イスラエル総体としてはガザは重要ではなく、シャロンとしては「国内での凄まじい反発に遭いながらも、痛みを伴う譲歩をした」というポーズが大きなポイントになる。「痛みを伴う譲歩」に見せるためには、実際のところ、右派からの反発が強いほうがじつは都合がいいので、攻防を繰り広げる本人たちは必死だったとしても、全体としては大きな茶番劇を演じていると言ってもよい。
この茶番劇が意図するところは、ガザからの《撤退》と引き替えに手にするヨルダン川西岸地域の入植地の恒久化しかありえない。違法な存在であり、国連決議にも反し、和平プロセスの妨げとなる入植地を永久的に存続させること。そして、パレスチナ国家を建設させないこと。そのためにパレスチナ人を囲い込み、分断し、入植地を守る隔離壁も着々と建設を続けている。
10月の初旬にはシャロンの顧問であるワイスグラス氏がこのようなシャロンの意図を裏付ける発言をして話題になった。
「ガザからの「一方的撤退」の目的は、和平交渉を凍結させ、パレスチナ国家の樹立を阻止することにある」(ワイスグラス発言、ハアレツ紙)
(この発言については 「ベイルート通信」10.7付「ガザ撤退はパレスチナ国家樹立を阻止するため」 に詳しい)
米国は自らが主導した「ロードマップ」から外れるこの路線にいくぶんかの反発を見せるだろう。だが、もっと以前から、このシャロンの「一方的撤退=入植地恒久化=永遠にイスラエルのもの」という目論見は米国との既定路線だったはず。
「21世紀の新バルフォア宣言」と呼ばれている4月のブッシュ・シャロン対談におけるブッシュの容認事項をもう一回、出しておきたい。
- ほとんどすべてに近い西岸地区入植地(23万人)の永久存続
- 1948年のイスラエル建国にともなうパレスチナ難民(国連統計で414万人)の帰還権の放棄
- 西岸に建てている隔離壁の建設黙認
- 暗殺攻撃を含めた、パレスチナ抵抗勢力への攻撃容認
ヨルダンなどからの猛反発もあったが、結局はこれを実現するためにシャロンは着々と動いてきているということだ。
すべてを目くらましにかけるための《撤退》騒動、そしてその舞台仕立てのためにパレスチナ人がさらに殺されるという事態が今の状態だと思われる。
* 「21世紀の新バルフォア宣言」 (ナブルス通信「ナクバ(大災厄)の日の前に」の後半に掲載。「新バルフォア宣言」についての文章。)
*グッシュ・シャロームは今回の《撤退》に関する自分たちの立場を表明している。"Gush Shalom's position on the "Disengagement Plan""は、 グッシュ・シャローム(英語版) のWeekly Ad 10.25付に。


