2004.10.08

NHK-BS 『ガザに死す』を見て

予想よりひどくなかったので、それなりにほっとした。(いくつかの部分ではsucide attackを「自爆攻撃」と正しく訳しているなど、良い発見もあった)[この話は 10月4日のブログ から続いています]

まずはNHK版が英国のチェンネル4版とは別に編集されたもののようであることがわかった。ラファのパレスチナ人からクレームがついていたこんなシーンはカットされていた。「ラファの街に貼られたシャヒード(死んだ者)のポスターを映し、『パレスチナ人の自爆攻撃者や過激派や罪のない者たちのポスターだ』というナレーションが入るところ。これはラファからは自爆攻撃者が出ていないので、明らかな間違い。

しかし、関係者を激怒させたラスト近くのシーンは、そのまま─それは仕方ないが─だ。ジェームス・ミラーさんが亡くなり、彼のシャヒード(大義に殉じて亡くなった者)としてのポスターを子どもたちが手にして行進がされているシーンだ。

ここではこのようなナレーションが入った。

"We told the palestinians not to make postar for James but they did it any way and With the death of James the extremists in Rafah gained one more martyr and we lost a dear friend"(私たちはジェームズのポスターは作らないでほしいとパレスチナ人たちに言ったが、彼らはともかくもそうした。そして、ジェームスの死で過激派はさらに一人の殉教者を得て、私たちは愛する友人を失った)

ビデオを録っている人はここだけでも見直してほしい。ジェームズさんのポスターを手にしているのは子どもたち。まわりを歩いているのも子どもたちだけだ。このジェームズさんの葬儀(のようなもの)はラファの子どもたち(子ども議会のメンバー)がジェームズさんの死を悼み、行った。ポスターを作ったのも子どもたちだ。そのことを制作クルーは知っているとパレスチナ人関係者は書いている。

「僕は制作クルーに言いたい。ジェームズを「シャヒード」と呼ぶのは、私たちの苦しみ、日常の悲しみを目撃しに来て、私たちと同じように残虐なイスラエル軍の手によって殺された外国人に共感の気持ちを表したいからなんだ」(撮影クルーと親交を結び、撮影にも協力したラファのパレスチナ人の言葉)

「シャヒード(一般には殉教者と訳されるので、意味が変容してしまう)」の捉え方が伝わっていなかったとしても、子どもたちが思いをこめて、ジェームズさんの死を悼んだことはわかっていたはずだ。それなのに、なぜ、こんな虚偽を持ち込む必要があったんだろう?

自分たちの苦しみをとりあげてもらえるということもあり、ラファではこの撮影クルーを歓迎し、とてももてなしていたという。戦闘員の青年たちを映しているシーンでも、相当の信頼がないと撮れないシーンだということがわかる。

だからこそ、ラファのパレスチナ人にはこのような虚偽のナレーションが信じられない裏切りとしてうつる。

他にもまるでイスラエル軍の説明そのままのナレーション(トンネル摘発のために家を壊している、「過激派」は一般市民に紛れ込んでいる)など、多々あるが、私がこれは…と思ったのは次のような箇所。

「これらの戦車を見て、中にはイスラエル兵だけがいると思う人もいるかもしれないが、私たちがここへ来て発見したのは、イスラエル軍には多くのアラブ人、ベドウィン、ムスリムの志願者がプロの兵士として参加していることだ」

(イスラエル兵とアラブやベドウィンの兵士は別物なのか?)これはジェームズさんが殺された直後にもこのような形で繰り返される。

「ジェームズを殺したのは、ベドウィンの部隊だった」

米軍に置き換えてみると話はわかりやすい。イラクかアフガニスタンかハイチでもいいのだがそういうどこかで、米軍兵士がフランス人ジャーナリストを殺害したとする。そのときに、「戦車にはアメリカ兵だけがいると思うかもしれないが、ここに来て発見したのは、米軍には多くの黒人やヒスパニックやムスリムが参加していることだ」「フランソワを殺したのはヒスパニックの部隊だった」…なんか変じゃないか。

ジェームズさんが殺される数週間前に同じ英国人のトム・ハンドールさんがラファで殺され、じつはその後にイスラエル軍は「殺したのはベドウィン兵だった」と発表している。殺したのはイスラエル軍兵士だろう!徴兵するときは「イスラエル人」として徴兵し、問題が起きたら「ベドウィン」だと言う。差別構造が丸出しなのだが、それをわざわざ他の外国のジャーナリストが使う不自然さ。(不自然といえば、同じようにラファで殺されたトム・ハンドールやレイチェル・コリーのことが一回も登場しないのも変だが)。ベドウィンを強調することで、「反ユダヤ的」という烙印から逃れようとしたのだろうか。

この「ベドウィン兵」問題については、トムに関連して以下にも書いている。 「トム・ハンドールを殺したのは誰?」

とはいえ、ラファの様子や子どもたちを取り巻く環境、うなりをあげるブルドーザーの恐ろしさ、などは説得力があったと思う。ジェームズさんが命を犠牲にして撮った映像がもっと良いナレーションと構成で作品になったら良かったのに…と思わずにはいられない。


参考に、このフィルムの撮影時にラファにいて、撮影に協力した人たちからの批判:

英国人による最初に見た感想・Death In Gaza

英国人によるつけたし・Death in Gaza2

パレスチナ人による怒り満載の詳細な批判・Death in Gaza ...versus... Sex and the City

英国?のアラブ系メディアウォッチからの批判

トップページインデックス | 関連カテゴリー コラム

■ コメント&トラックバック (1 件)

あるのは絶望だけ パレスチナの子供たちのHARDな毎日

コメント by :死ぬのはやつらだ

ガザに死す 〜英国人カメラマン最後の映像〜 製作 フロストパイド・フィルムズ・プロダクション(英04年)を国営BSで観た。ラファ(ガザ地区)でイスラエル軍によって射殺された、カメラマン、ジェームス・ミラーが写した、パレスチナ人の子供の悲惨な現状だ。そこに写っている子供達は、日本の子供達とは対極の状況にある。毎日のように、イスラエル軍によって殺されているのだから。

トラックバック from:反米嫌日戦線

2004.10.10 (Sun) 04:33