2004.09.24
ひとつの地獄からもう一つの地獄「日本」へ
「あなたはなぜパレスチナ難民キャンプに行くのですか?すぐそばに難民キャンプがあるのに。飛行機代も要らない。通訳も要らない。パレスチナの難民キャンプよりもっとひどい状況に置かれた人がここにいるんです」
その人は押さえきれない怒りを露わにして、くってかかってきた。昨日のことだ。その人自身が「難民収容所」(正確に言うと、日本国の入国管理センター)に収容されていて、少し前に出てきたということだった。
「1年以上も歯を磨いていない人がいるの、信じられますか?どうしてかわかる?歯ブラシも歯磨き粉も買えないから。そんなお金がないから」
伝えたい事実が思いと共に次々と溢れてくる。これを言われていたのは、私ではなく友人だったが、この言葉は私にも向けられたものだった。
日本の難民認定が最低であること──質的にも量的にも──は知っていたし、入管の収容センターが恐ろしく劣悪な環境であることも知ってはいた。
難民認定を求め、収容されている難民の釈放を求めて、渋谷の国連大学前で座り込みを続けていたクルド人家族たちが警察に強制排除されかけ、座り込みを終えたということも聞いてはいた。
だが、目の前にいる人が語る言葉は私のちっぽけな知識をぶちのめした。
「わたし、担当官に聞きました。『今、何時ですか?昼ですか、夜ですか』って。昼の2時だと言われました。『ありがとう。ここにいるとわからないもんで』わたしは答えました。窓がないんです。空も見られないです」
収容所は雑居房が8畳のスペースに8人。寝返りをうつと、他の人にぶつかる。床はビニールで、夏には汗でべたべたに。揚げ物ばかりの食事は出るが、衛生用品などは自分で購入する。だから、お金がなくて、歯ブラシもなければ、石けんを使ったことがない人もいる。
「収容所にいた1年の間に日本のテレビをだいぶ見ました。そこで日本の刑務所の中が映されているのを2度見ました。で、わたしはわかった。刑務所のほうがずっといいです。なぜなら、布団があるでしょう?わたしたちは布団をもらえない。毛布1枚だけです。冬も。わたし、犯罪者じゃない。だけれど、犯罪者よりひどい扱いを受ける。日本は人権擁護の国ですか?」
書いていて苦しくなってくる。この人は担当官(いわゆる「看守」みたいな人)を呼びつけにしたことで、懲罰房(独房)に入れられたという。「自分が「さん」付けで呼ばれるなら相手も「さん」付けで呼びます。でも、自分が呼びつけにされるから、わたしも同じようにしたわけです」
その独房は思い切り狭く、24時間明かりがついたままの場所だった。どこかで聞いた話だ、と思ったら、バヌヌさんやパレスチナ人が入れられるイスラエルの刑務所の独房と同じだ。
「誰が家族を、自分の文化を、習慣を、言語を、故郷を捨てたいと思うでしょう?誰もそんなことは思わない。それでも捨てないといけないのです。なぜなら、そこでは生きていけないから。だから、日本に来ている。なのに、どこかへ行けという。いったい、どこへ行けと?」
日本での難民認定数はたとえば26人(2001年)。米国28000人、英国19000人…と比べたら、めまいがするほど少ない。(参考: なんみんFAQ )桁がいくつ違うんだろう?そのうえ、収容センターでの非人間的な扱い。
難民申請を出すことで、収容される(しかも、かなりの長期間)ことがほとんどなため、難民申請を出さないで隠れ住む人も増えているのだという。難民申請をだしても、就労許可も下りなければ、生活援助もない。
「働いちゃいけないという。だけど、どうやって生きていけばいい?わたしが飢えたら、万引きしたらいいということですか?誰もこの質問に答えてくれない」
その人はぜひ収容所のなかを見てほしい、中に入ってほしいと何度も訴えた。しかし、(面会はともかく)その中に入った日本人は(法務省の人間は除いて)誰もいない。マスメディアのカメラも入ったことがないそうだ。そんな閉鎖された場所があるなんて。
「わたしはいいんです。あそこから出られたから。でも、わたしは知っている。歯磨きもできないで暮らしている人を。それを忘れることができるのは人間じゃない」
パレスチナで、イラクで、何の罪を犯していなくても捕まえられ、拷問され、収監されている人たちがいる。ここで、日本で起こっていることもあまり違わない。イスラエルのなかで私が憎んでいる部分はそのまま日本にもあると思ってきたが、それをよりくっきりと知った体験になった。人を国籍で分けること。それにより人を人間として扱わないこと。何をしてもいいこと。無関心でいられること。
「ひとつの地獄から抜け出したと思いましたが、わたしは別の地獄に来てしまいました。小さい井戸から抜け出したと思ったのですが、より深い井戸に落ちてしまったようです」
(以上は報告会とかではなく、個人的な会話の内容です。伝えてほしいと言われているし、私も人に伝えたいので書きました。が、個人的なことはどこまで書いていいのかわからないので、ほとんど省いています(難民認定が降りたわけでもないので)。英語での手記をその人は記したということなので、そのうちにもっときちんとした内容が届けられるかもしれません)
続編(2005.2.2) 「簀巻き(すまき)にして強制送還」
[西日本入管センターに収容されている人たちへのアンケート結果をとりあげた文章]



常連理事国の資格ナシ「難民受け入れ10人」
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2004.09.25 (Sat) 18:37